Omizu

マイスモールランドのOmizuのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
3.8
【第72回ベルリン映画祭 ジェネレーション部門スペシャル・メンション】
是枝裕和率いる分福から出た新鋭・川和田恵真監督が難民問題を描いた作品。主演は自身も5カ国のルーツを持ちViViのモデルとして活躍する嵐莉菜。父親や妹、弟も実際の嵐莉菜の家族がキャスティングされている。

徹底したリアリズムとヒューマニズムに貫かれた、紛れもなく是枝裕和の系譜にある硬派な作品。特別好きなわけではないが、減点しようがない完成度にある。

公開時に話題になっていたが、あまりに重そうで敬遠していた。観てみると重いのは間違いないけど、思っていた重さとは違っていた。

あからさまな差別描写はない。クルド人だから、ということでいじめられたりとかはない。それよりも「難民だから」というのが大きい。

「難民だから」働けない、「難民だから」進学できない、「難民だから」居場所がない。そんな苦しさが切実に伝わってくる。

難民申請受理しないなら受け入れるなよって思うよね。『牛久』とか観て入管のヒドさとかみてしまうとどれだけ絶望的なのかが分かる。受け入れてイヤなことなんてないはずなのになんで日本政府はこんなにガードが堅いのだろう。

父親、妹は一般人、ということで演技は微妙。弟くんはまだ小さいということもあるかもだけど上手かった。才能ある気がする。何より嵐莉菜さん、荒削りだけど自然体な演技で素晴らしい。脇を固める池脇千鶴、平泉成、韓英恵さんらは安定の上手さ。

難民を描いた作品としても、一人の悩める少女を描いた作品としても、家族を描いた作品としても減点しようがない。誠実で真面目なつくり。

故に是枝作品のような終盤の盛り上がりがもう少しほしかったところ。あるにはあるけど行儀がよすぎて盛り上がりきれなかった感じ。

とはいえお父さんが「帰らせるのは日本でしょ」と言うところは胸にキた。本当にすみませんと謝りたい気持ちになった。

川和田監督は是枝監督の後継者として今後も注目すべき才能だし、嵐莉菜さんも俳優としての注目株だ。この作品は今後の日本映画の一つの方向性を示している。非常に重要な一作であることは間違いない。
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