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マイスモールランドのあんずのレビュー・感想・評価

マイスモールランド(2022年製作の映画)
4.3
評判を目にしていて劇場に行けなかったことが悔やまれていた作品。なるほど、クルド人難民家族とその仲間たちの話が押し付けがましくなく、分かりやすく描かれていた。

日本語もクルド語も流暢な高校3年生よサーリャは家族だけでなく、近くに住むクルド人たちの通院やら学校からのプリントやらの通訳を頼まれていて、やることを書いた付箋がいっぱい壁に貼られている。忙しくても父に言われたら断れなくて、『コーダ あいのうた』の主人公にも重なる苦労が見て取れた。

バイト仲間の同い年の聡太と仲良くなって、初めて自分のルーツについて話せたことは良かった。この彼の存在があって本当に救われた。聡太の母親を演じた池脇千鶴(大好きな女優さん)の顔が変わりすぎていて、どこか具合が悪いのではないかと心配になった。

日本は難民の受け入れ数が物凄く少ないと、以前何かの映画を観た時に知ったような気がする。細かい法律や手続きのことはよく分からないけれど、明らかにこの劇中の家族が置かれている状況は異常だし、グローバル化と言われて久しいこの時代にそぐわない。

これ以上描き切れなかったのかもしれないけれど、その後、この家族がどうなったかもっと知りたかった。昨日、入管施設で亡くなったウィシュマさんの映像もご遺族によって公開された。サーリャの父も入管施設は酷い所で、まさに日本流の「お・も・て・な・し」だと言っていた。日本人としてとても恥ずかしかった。
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