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珈琲時光のakubiのレビュー・感想・評価

珈琲時光(2003年製作の映画)
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ゆったりとした日常のなかで描かれる平成のわびさび。流れる時とともに変わりゆくひとびとの生き方(とりわけ都会の)。むかしの中央線はつつましやかでかわいいかったな。駅員さんが意気揚々と切符をきってくれる改札がまだある駅もあったっけ。畳のにおいは身体が嬉しくなる。
通りぬける夏の夕方の風。お父さんとビールと野球中継。手持ち無沙汰な気だるい時間。身軽なわたしたちは雲や星や夕日を眺めた。むかしはこんなにもいろんなことがシンプルで簡素で綺麗なものは埋もれずにありのままわたしたちの傍にあった。流れゆく時代の哀愁すら、もう時代遅れなのだろう。時代もひとも街も、変わりゆく摂理。
そしてひととひととのふれあいは減りゆき、物ばかりが増えつづけ、知りたいことは掌のなかのPCで事足りてしまう。時代にのまれながらも泳いで、ちょっとした寂しさはこころの片隅に。

タータンチェックのカーテン。キッチン湯沸かし器。おふくろの味の肉じゃが。大家さんへの挨拶と調味料の貸し借り。しまわれていたたくさんの思い出がふたたび磨かれたここち。
エンディングの「一思案」がとてもしみます。
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