出張先で鑑賞。史実をもとにしていることやテーマが深刻なだけにノーラン監督の特徴であるノンリニアなストーリーテリングは最低限に止めた (第三幕を「現在」の時系列として捉えモノクロで進行するパーツと「回想」を研究生時代から順に追ったカラーパーツ程度)。でも作品全体の色味や現物感重視の撮影模様でしっかりとノーランとしての作家性は維持。実験成功後のスピーチシーンが秀逸。科学→工学→兵器への移行とその力学にも世の穢れを感じさせる。でも秀逸ながら後半はかなりきつい。犠牲者側の物語りが心に浸透しているだけあって。作品は間違いなく「反戦」、「持ちすぎる力への警鐘」であるのは分かっても全く腑に落ちない。ある意味、本作だけでトランスメディアストーリーテリングを体験しているかのよう。これは日本人ならではの体験かも。でもアカデミー賞の時期まで上映時期を延ばしたのは英断だった。政治に鈍感な筆者ですらそうなんだから。
