クロ

オッペンハイマーのクロのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
 大前提としてオッペンハイマーという人物の伝記映画であって原爆投下のシーンが無いとか騒いでる奴はアホ。
 物語としては以前まではSFのノーランが好きでダンケルクがハマらなかったけど、今回はノーランの底力を見せつけられた。IMAXフルサイズを最大限に活用し人物の表情を頻繁に映すことで常に感情が揺らされていた。3つの時系列、2つの視点によってオッペンハイマーの良い面、悪い面、矛盾点が映し出されることでオッペンハイマーに感情移入させず、物語を客観視させる。決してオッペンハイマーは良い人だったで終わらせないノーランの強い意志を感じた。オッペンハイマーの伝記物語として文句ない出来、ノーランがただの映画監督じゃないことを再認識させてくれた。
 そしてノーランといえばのIMAXカメラと音響も圧倒的。風景、顔のアップとルーズ、オッペンハイマー自身の心情描写は映像作品としても完璧。そしてトリニティ実験の爆音、原爆投下後スピーチの足音はIMAXの音によって恐怖を感じさせられた。役者の演技力はカンストしてるので語るまでもないが、キリアンマーフィーは圧倒的だった。さらにラストシーン、ノーランといえば物語はまだ続くようで観客自身に考察を委ねるようなラストシーンが得意であり、今回もそうであったが強いメッセージを感じるラストだった。希望と絶望を同時に持たせるラストは圧巻。
 予習復習は必要だけど半年以上待たされた甲斐があるほど歴史に残る作品、面白いとかいう感想だけで片付けられない、非常に感慨深い映画、映画体験としてこんな思いをしたのは初めてだった。SFでなここまでの映画を作れるノーランは現代最高の映画監督を言っても過言ではない。日本で公開してくれてありがとう
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