このレビューはネタバレを含みます
戦争を題材にしたハリウッド大作で、ここまでアメリカに批判的な(中立的な)映画はなかったのではないだろうか。
「原爆の父」と呼ばれるほどなので、オッペンハイマーは確固たる信念のもと原爆を発明したのだと思っていた。しかし作中ではトリニティ実験成功で明らかに狼狽するなど「原爆発明に対する信念の無さ」が明確に描かれており、ここが本作の重大テーマに感じられた。
被爆国に生まれた身からすると、第二次大戦をテーマにした映画はどうしても被害者意識を持って観てしまうが、(想起させるものはあるものの)戦争の被害映像がほとんど無かったからか、このような感情は最小限に抑えられたと思う。ナチスや東京大空襲、真珠湾の話も出てきたが被害映像はほぼ出ていない。
映画ではあくまで「原爆ができて、使われるまで。そしてその後」をドキュメンタリー的に追っていくのみで、(登場人物の発言としてあるものの)「作るしかなかったのだ」という勝てば官軍的な正義を伝えたい映画には思えなかった。
自分の中でもまだ答えはでないが、ノーランが伝えたかったのは、
・ソ連への牽制
・科学技術のリスク(プロメテウスの火)
・(悪い意味での)進歩を辞められない人間
または
・素材は与えたから自分で考えてね
あたりだろうか。
劇伴からインターステラーぽさを感じたのでハンスジマーかな?と思ったら、テネットでも担当したルドウィグ・ゴランソンという方でした。