私は、世界を破壊してしまった。
原爆の父・オッペンハイマーの生涯を映像化した本作。オッペンハイマーが原爆を生み出したことに対する苦悩と葛藤に焦点を当てるというよりも、彼の壮絶な半生を通して、原爆というかつてない大量殺戮兵器がもたらした政治的陰謀、その脅威を利用しようとする人間の醜さ、業を炙り出す。
複雑に絡み合った3本の時系列が収束するストーリーテリングはさることながら、IMAXが織りなす映像表現と音響は圧巻。（急にぶちこまれる爆音に萎縮して、軽くトラウマになる）特にトリニティ実験の没入感とハラハラ度合いはこれまで経験したことのない映像体験だった。
ただ、映画の大半は会話劇であり、フィルムサイズがしょっちゅう切り替わる鬱陶しさも相俟って、IMAX鑑賞が必須とは感じなかった。
被爆国に住む一人として、強い憤り・虚しさを感じるシーンはあるものの、人間の二面性をこれでもかと見せつけられる本作は、一人でも多くの人に見てもらいたい一本。
