とむ

オッペンハイマーのとむのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
まず日本での公開が危ぶまれたというのが理解できないくらいにはバランスが取れている。
このご時世で、しかもオッペンハイマーというタイトルで、しかも超大作映画で何も配慮してないわけないだろうとは思うが、、、
周りが日和ってる間にビターズエンドの一人勝ちということで、とにかく観れてよかった!

今作は恐怖感を感じる音が重要で、IMAXはもちろんのこと、ドルビーシネマで観るのも良いんじゃなかろうかと思う。(ドルビーシネマファンなので。。)
今回ノーマルの劇場で観たのだが、それでもオッペンハイマーの脳内イメージ映像や、トリニティ実験のシーンは恐怖感を抱いた。

今作で一番印象的だったのが、広島原爆投下後のオッペンハイマーの祝賀スピーチ(?)のシーン。
口では「ドイツにも落としてやりたかった」などのいかにもアイツらが喜びそうな威勢のいいことを言ってはいるが、
内面はというと、視界はグラグラで、周りの音も遠ざかっていき、今にもぶっ倒れそうなほどメンタルに来ている。
本人もメンタルのやられ具合を自覚してない状態で、「あれ、おかしいな、、」みたいになってるのがリアルで、実際にもこういう状況だったのかもなと思わされる。
鑑賞前に観たドキュメンタリーで、原爆を生み出し広島と長崎が被害にあったことに対し「後悔していないが申し訳ないと思っていないわけではない」というようなコメントを残したということだが、
本人としては良いとも悪いとも言えないが、確実に精神にダメージは負っている、というような一言で説明できないなんとも複雑な心境だったのではないかと推測する。
この「どっちつかず」な状況のままスクリーンに映し出していることに大変好感が持てる。

あと、池に佇むアインシュタイン初登場シーン。
あの何とも言えない大物感が良かった。
「え?あれがもしかしてあの有名なアインシュタイン先生??」っていうなぜかこっちがそういう感覚になってしまった。
本物見ちゃった的な。。。

そしてゲイリー・オールドマンが出ているので、無条件で点数50点アップ。

あとは不満点。

ある意味法廷劇として共通点のある「落下の解剖学」を同日に観たのだが、比べて本作はどうも分かりづらい。
ノーランはやはりどうしてもストーリーの語り口が上手い監督とは思えない。
SFなどはこの分かりづらい語り口がプラスに働く部分はあると思う。
インセプションはこの分かりづらさとエンタメ性のバランスがノーラン監督の中で一番上手くハマっているように思う。
だが、本作はオッペンハイマーの心情をむしろ分かりづらくしなければならない(白黒はっきりさせてはいけない)。
それに加えて話運びがわかりにくいんじゃ、もう何が何やらである。
心情がわかりにくい分、情報整理の方はちゃんとしてくれよ、とは思う。そっちはSFでやってくれ。

とは言ったもののノーラン大好きなので次回作が公開されたら即観にいく。
社会派に見られたい中学生的な側面もあるがそこもまた好きなポイントである。
とむ

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