「この兵器を人類が持つべきかは分からないが、ナチスが持つべきではない」
おそらくナチス側もアメリカが先に持つべきではないと考えていただろう。つくってはいけない兵器を誰かがつくらなければならない。当時の人類はそこまで追い込まれていた。
「世界はそれが使用されるまで、恐ろしさに気づかない」
世界のどこかに少なくとも一度は核が落とされるのは避けられない運命だったのかもしれない。
本作は徹底してオッペンハイマー視点で描いているため、確かに広島、長崎への原爆投下自体はあっさりと終わっていく。それでも、彼視点でその恐ろしさは十分過ぎるほど描いていたと思う。
ただ、後半はオッペンハイマーのソ連のスパイ容疑がメインになっていくため、“原爆の悲惨さ”のみを期待して観ると、全体的にはその要素は薄く感じるのかもしれない。
本作の視点が全て正しい訳ではないだろうが、ひとつの視点として日本人を含む全人類が理解しておくべき内容。あらゆる視点をお互いに理解した上で、本当の正しさとは何かをそれぞれが考えるべきだと思う。
重くてシリアスな内容だが、知識の少ない自分でも十分理解できたし、退屈せず、むしろ引き込まれるすばらしい構成と演出になっていた。
