3時間という長さを感じさせないのはさすがノーラン監督。彼流の時制の交錯はもはや彼の映画には欠かせないお約束だが今回も効果的に使われていた。肝心の中身は極めてまっとうに（本当の人物は知らないがキャラクターとしてのオッピー）原子爆弾を生み出した人物の苦悩を表現しようとしているので、何故あのようなキャンペーン騒動を起こしてしまったのだろう（そういう性質の映画ではないしナショナリズムを煽るようなものでもない）と勿体なさを感じた。
一部批判の対象になっているが、ドキュメンタリー映画ではない以上広島や長崎の惨状を織り込むのは気が引けたのだろう点もよく分かる。そのようなシーンが入っていれば（示唆する演出はあったが）、オッピー同様途中で目を背けるはずだから。
被爆者の子孫であり生粋の反戦教育を浴びてきた広島出身の私からみても現代のプロメテウスの生き様をフェアに描いていると感じたし、彼に続く世界の崩壊につながる「火」を起こしている、起こしうる人物が今後出て来ることを防ぐために我々が何ができるのかというメッセージを素直に受け止めるべきだろう。
