このレビューはネタバレを含みます
原爆投下の是非に関する日米の感情の差の話がよくあるが、アメリカ側の視点の一例を見れて良かった。
自分がもしもアメリカ人で、大切な人が本土作戦に送られる直前に原爆投下によって命が助かっていたとしたら？
まずはやっぱその人が無事に帰ってきたことを喜ぶだろう。
その後重度の火傷の写真を見たり、原爆病の実態を知ったとしても、天秤の片方を選ぶなど到底出来ないし、やはり人間の心理として正当化してしまうだろう。
演出はかなり好みだった。
いつか観た「Jacob's ladder」のホラー演出を思い出した。
いつかノーランにガチのホラー映画をやって欲しい。
音楽はいつものハンズジマー…
かと思いきや別の人だったけど凄い良かった。
時折「音楽に頼り過ぎでは？」となるシーンもあったけど。
何より登場人物が多く、役者はノーラン組沢山。
「この人過去作で見たけど誰だったっけな…」となって字幕を見過ごすなどした。
ただロバートダウニーjrには全く気付かず…
(マーベル知らんから見慣れてないだけ。)
時折カットインする様々な妄想のシーン。
前半は原子や光、そして爆発。
出来ればそこに、爆心地の妄想も加えて欲しかった。
日本や被爆者への忖度は抜きで、あくまでオッペンハイマーの苦悩を表現する一要素として、容赦無い悪夢描写を観たかった。
ターミネーター2のサラコナーの悪夢的な。
まぁ、題材がセンシティブ過ぎるし、ノーラン位の地位になると炎上もあるし難しいことでしょうが…。
戦後の苦悩の場面で広島・長崎の被爆者ではなく元カノの溺死の妄想が思い浮かぶのはなんかリアルな人間臭さだった。
人多過ぎて、ストーリーは着いてくの難しい。
どうしても原爆関連の話を予想してたけど、1945以降の公職追放パートも結構ボリュームあった。
原爆がどうとかの括りを超えて、人間の業について考える時間だった。
不倫、政治、恨み、虚栄心、核分裂、核融合。
インターステラー以降「ノーラン組はどこへ向かうのだろうか？」と思ってたけど、中々好感触な一歩。
もう一回くらい見たい。
宇宙SF、戦争史実モノ、オリジナルルールSFモノと来て、今回の伝記モノ。
そしてまだ53歳のノーラン様。
キャリアを総括するにはまだまだ早過ぎる。
最近アメリカでは役者のボイコット？とかで製作費高い映画は作りづらくなってるらしいけど、ここらで一度派手さの無いノーラン作品を観てみたかったりする。
恋愛映画とかヒューマンドラマ系とか、どないでしょ。
全ジャンルで名作つくって欲しいなと、俺は思うねん。
