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オッペンハイマーのprasticのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.8
原爆投下後のセレモニーで被爆者を幻視するシーンが凄い

3時間へとへとになったけど会話劇のスピード感を考えると短いくらいだった、地味になりそうな聴聞劇をスペクタクルも交えて描ききってしまう。
あくまでも、オッペンハイマーが原子力にどう向き合ったかという人となりに焦点があたった映画だと感じた。
原爆投下に加担したことへの加害意識と、間接的にしか関わっていないがゆえの特有の疎外に悩まされる、「原爆の父」と呼ばれながらも「科学者」として他者化されるオッペンハイマー固有の立ち位置が描かれているように思った。
裁判じゃ無いけどヒアリングをします的な曖昧な場所で、罪(したこと)を問われる状況がそれを象徴している。
聞き取り調査は彼の人生における様々な側面に光があたる、不倫や共産主義への加担…、それはオッペンハイマーという人間の多面性を明らかにすると同時に、原子力の研究において彼自身が向き合うべきテーゼに向き合わせてくれず、問題は端に追いやられる。その問いを共有するのは、最も重要な仕事をした科学者だけだ。本当に抱えるべき課題を、彼はをまぶたの裏に見る…

罪悪感を捨てて成さねばならないことをするという使命感、ユダヤ人としての民族意識とアメリカ人としての誇り、そういったことでは正当化しきれない呵責…複雑な問題が複雑な利害関係のもと描かれるので、全部理解できているとは到底思えないけど、それでも多くを考えさせられた。
こんな脚本どうやってつくるんだろう…
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