Ponsei

オッペンハイマーのPonseiのネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

数分過ぎた頃から、涙が止まらなかった。
もし私がアメリカ人で、アメリカの教育を受けていたら、原爆を否定できただろうか。原爆を落とされなかったら、日本は本土決戦で燃え尽きるまで、戦争を止めることができたのだろうか。しかし、非戦闘民が新開発爆弾の実験で殺されてよかったのか。映画の進行とは別の思考で頭がぐちゃぐちゃにされる感覚に嗚咽が止まらなかった。

科学者の一番大切な仕事は、新しい知を積み上げて、人類の知性を広げることなんだろうと思う。また、見えやすい形で社会の役に立つ、社会に求められる研究は、きっとやりがいがあるだと思う。でも、兵器そのものを作るのは、やはりダメだよ…。

この映画がSF(フィクション)であって欲しかった。



>>追記 2024-04-17

2回目、映画館で見ました。
プロットも、演技も、映像も、音楽も全て素晴らしい。
しかしながら、やはり、悲しいし、イライラするし、情けなくなる。
しばらくは、見たくない映画だ。


(以下は、ただのくだらない妄想、書き散らし。)

ミクロとマクロに、人の欲と狡猾さによって、あらゆる不始末が起きてしまっていることを改めて思い知らされた。

突き詰めると、愛は、誰かを別の誰かより優先させるという点において、区別(・差別)の始まりかもしれない。それを集団単位まで許容してしまい対処しなければ、紛争へと発展してしまうものなのかもしれない。

ミクロに考えると、
軍将校レズリー・グローブス(マット・デイモン)に機密情報へのアクセス権を制限されたロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、権力による圧力を感じて、反抗する。
ルイス・ストローズ(ロバート・ダウニーJr)は、オッペンハイマーを起用することで、自分の政界への架け橋として利用する。
一方、オッペンハイマーは、愛人のジーン・タートロック(フローレンス・ピュー)に対して、自分の功績があれば、不倫など大した問題ではないといい、都合の良い関係を続ける。最終的に、妻キティ(エミリー・ブラント)の方を取る。

それは、周囲の人への平等な愛を訴えながら、少し離れた人々、例えば愛人、他の家族、社会の人々への愛は、家族への愛に負けてしまう。


マクロに考えると、
戦争中だから、ナチスに一番に核兵器を持たせてはいけないから、ロシアが核兵器を持ってしまうから…。様々な理由を付けて、核兵器開発を正当化する社会。それを止められない私たち。

それは、個人の基本的人権を訴えながら、少し離れた人々、例えば違う国・地域の人の権利は、自分たちの権利に負けてしまう。


愛は、美しくない。美しいとしても、人間の邪悪さと表裏一体だと思う。
Ponsei

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