IMAXにて
いろんな思いがぐるぐると回って、なかなかレビューを書けずにいました。
原爆を落とした側の視点になったのは初めて。
貴重な体験をさせてもらった気がします。
科学の進歩は諸刃の剣。
広島と長崎の普通の市民が一瞬にしてそれまでの日常を奪われたことは到底許せることではないけど…
科学者の飽くなき探究心も否定できない。
とんでもないものと気付きながら、結果を想像できたはずなのに、完成させてしまった科学者の性。
〈アメリカがやらずとも原爆の開発は時間の問題だった〉
〈アメリカも多くの戦死者が出ていて、戦争を早く終わらせる必要があった〉
〈ヒトラーが死んでドイツに使う理由がなくなった〉
〈日本は決定的なことがなければ諦めない〉
大義名分を並べられても、都合の良い後付けにしか聞こえない。
実際投下されてからはオッペンハイマーの苦悩が、広島・長崎の惨状を描かずとも目線や音、幻影の演出で伝わってました。
学生の時の、寸前で取り返した毒リンゴのようにはいかなかった。
その後水爆の開発に反対して酷い扱いを受けたことも初めて知りました。
悲劇が起きてからでないと本気になって学べない。
起きてからでも学べない。
何やってるんだ人間…
でもそれが人間…
と思ってしまいました。
もう核のない世界は選べないのだから、正しく扱えるように動いていくしかない。
自分には何もできないけど、せめて自分の子どもにはそんなふうに伝えていきたいと思いました。
戦後80年が経とうとして、実際に体験した方が少なくなってきてしまった今、こんなふうに考えるきっかけをくれる作品がアカデミー賞を獲り関心を集めることは、大きな意義があると思う。
アメリカで、ノーラン監督にしか作れなかった秀作。
日本でも日本視点の良い作品が今後も作られ、本作とセットで見ることができる未来を期待したいです。
余談
クリストファーノーラン監督の作品は難し過ぎて苦手意識があったんですが、今回は伝記物ということで比較的分かりやすかったです。