このレビューはネタバレを含みます
ある結果が、その過程での人間の行動と感情、そして周囲の状況など多層的である中生まれてくると再認識する機会だと感じるものの、明確に非核だし、オッペンハイマーはもちろんのこと生じていた気色の悪い権力闘争なども断罪する内容ではあったと思う。
仕事の後に観るものではないと途中から確信してしまうズシっとした重さがあった。
内容を追っていくことが非常に厳しいスピード感と人物相関の難解さがあったから、全てを理解するのは無理だったとノーラン作品鑑賞後のお決まりの感想は出てきてしまうのだけど、記憶に残るインパクトのあるシーンが存在するだけでも個人的には今作の価値があったと感じる。
それは実験が成功して原爆が投下された後、オッペンハイマーが称賛されるシーンなのだけどあそこは特にヤバいと思う。
不快なリズムを刻む踏み鳴らされた足音が徐々に聴力が奪い、爆弾そのものから発せられる光線のような白飛びで視界が奪われていく様がめちゃくちゃ怖い。
あの時の精神状態のオッピーは自分がどういう言葉を発しているのかということさえわかっていなかったのではさえ思う。
オッペンハイマーに見えていたものは最後提示されるが、強大な権力のもとどうやって抗っていかなければならなかったのかという一生の問い、悔恨。
［2024年 71本目］
