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オッペンハイマーのtomoeのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.9
原爆の父と呼ばれた物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描いた作品。
第二次世界大戦下、アメリカで立ち上げられた極秘プロジェクト「マンハッタン計画」。これに参加したJ・ロバート・オッペンハイマーは優秀な科学者たちを率いて世界で初となる原子爆弾の開発に成功する。しかし原爆が実戦で投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。冷戦、赤狩り―激動の時代の波に、オッペンハイマーはのまれてゆくのだった―。

日本人にとっては賛否、そして抱く印象が多岐に渡るだろうと感じたのが第一印象。
もちろん実際に被爆した広島や長崎の方々、そして日本国民にとっては原爆は非道な殺戮兵器で許し難いものであることは百も承知で非難も覚悟で言うけど、遅かれ早かれ原爆は発明され、世界のどこかに落とされていたのだろう。落とされたのが日本でなければ、現世界は核戦争になっていたかもしれないということ。
そして今回の作品はあくまでもオッペンハイマーの半生を描いたもので、彼の苦悩や葛藤、物理学者としての栄光や様々な人たちの思惑に巻き込まれる悲劇に焦点をあてて描いたもの。実際の原爆投下の悲惨さが描かれていないことへの賛否が度々あがっているけど、それはオッペンハイマーの表情や戦後の彼の言動から充分読み取れる。
あくまでも物理学者の性というか、仮説と検証、探究心を突き詰めたが故の核兵器、物理学者としてのプライドのようなものなのかな。
彼の生き方や生み出したものに全く賛同はできないけど、彼が一人の科学者として核開発に背を向けることができなかったことには理解ができる。
上手くまとめられないけど、多角的に思考が飛び交って、一辺倒におもしろかったとか非難とか、共感とかできない。でもそれがこの作品の良さで重要なことなのだと思う。日本人だからこそ、絶対に鑑賞すべき一本。
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