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オッペンハイマーのvenom9のレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.1
上映時間が3時間と長いため、劇場への足取り軽く、とはいきませんでしたが、終わってみるとそう長く感じませんでした。ノーランあるあるの時間軸を弄るややトリッキーな作りでしたが、さほど違和感なく鑑賞できました。
オッピー(オッペンハイマーの愛称)主観パートを軸に申すと、彼の心境や作劇上のムードの変化から便宜上、1)学生の頃からロスアラモス国立研究所の立ち上げ、核実験「トリニティ」の成功まで、2)原子爆弾の実戦投入(広島、長崎)、プリンストン高等研究所長就任、共産圏への情報漏洩疑惑、公職追放、という2部構成と見做せますが、私は後半が興味深かったです。
前半で苦楽をともにした仲間の一部に裏切られ、彼を毛嫌いするルイス・ストロースに嵌められ、堕ちた英雄となります。自身のキャリアの危機に直面したオッピーの、冷静ではあるが諦めたような様子と、妻のキティの「戦え」「負けるな」とオッピーを鼓舞するマッチョさが好対照です。公聴会でオッピーの複数の不貞行為が曝されますが、キティはさほど意に介していないように見えました。そりゃスパイ容疑がどうなるかの方が深刻ですよね。
私にとって本作の目玉はストローズ(演:ロバート・ダウニー・Jr、以降RDJと書きます)ですね。嫉妬や恨みのあげくオッピーを陥れるというゲスっぷりで、こういう人物はわりとどこにでもいますがRDJの怪演のため、ストローズご本人より随分魅力的な人物に見えます。オッピーに対し、また彼のいない場で彼について喚き散らす姿は、「アベンジャーズ エンドゲーム」にて冒頭キャプテンマーベルに救助された後、スティーブ・ロジャースに八つ当たりする衰弱したトニー・スタークを思い出しました。神経質そうな皮肉屋っぷりが良いです。
RDJ、恐るべし。
(2024年 4月 劇場で鑑賞)
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