さいとう

オッペンハイマーのさいとうのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
5.0
観てよかった。いろいろ感じたことはあるけどまずひとつ言いたいのは、ノーランってエンタメ映画作るの上手すぎない?事前に歴史的背景や映画の構造をある程度予習したおかげでもあるんだけど、3時間まったく飽きる瞬間がなかったし、誤解を恐れずに言えばめちゃくちゃ面白い映画だった。冒頭の盛り上がりのまま駆け抜けてしまった。

果たしてオッペンハイマーはプロメテウスなのか?そうだとして、罰せられるべきなのはプロメテウスなのか?それとも火の使い方も知らない人類、ひいては政治屋なのか?真実に迫ることが終焉に近付くことを意味する世界で、本当に科学が有益か?党派性やナショナリズムの確かさが、その人間の倫理観の正しさや正しくなさを示し得るか?長い時間をかけてようやく己を滅ぼす手段を手に入れたという、まるでセカイ系フィクションのような歴史の先端に在る生命として、二項対立にとどめることのできない問いの狭間を、俺は揺れていたい(→唐突な性行為突入)。きっとノーランも、揺れたままこの作品を編み終えたんじゃないだろうか。