てけもと

オッペンハイマーのてけもとのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3
この映画は好きな映画だ!

しかし肝心のオッペンハイマーはブレブレ男である。

資本論3部作を読破して共産主義に関心を持つくせに陶酔も入党もしない。
不倫しまくるのに、最後には嫁さんとのことを自分達は何でも乗り越えてきたという。
3年間もの歳月を注ぎ込んだ装置の開発の果てに、軍縮を支持するようになる。

全く彼には理論の才能だけで思想というものが無いのかと思う。

しかし彼は最後まで科学者としての矜持は忘れなかった。政治屋になり下がることも
なく、彼は理性ある科学者として彼が"引火させてしまった大気"の今後の行方を憂慮していたのだ。

装置の開発はゴールではなく、彼にとっても世界にとっても始まりにすぎなかった。
世界は未だに戦争を続け、核を保持し続ける。

この映画はSFでも政治劇でも英雄譚でも、単なるオッペンハイマーの懺悔の映画でもない。

"引火させてしまった大気"の中で君たちはどう生きるかと言うお話なのである。
てけもと

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