SotaroMaki

オッペンハイマーのSotaroMakiのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.7
「プロメテウスは人間に火を与えた
その罰として永劫の苦しみを与えられた」

冒頭のこの言葉に全てが集約されていた様に感じました。




核融合と核分裂、カラーとモノローグ、オッペンハイマーとストローズ、交差する時間軸で二つの視点から描かれる原爆の父J・ロバート・オッペンハイマーの半生。

クリストファーノーラン監督の集大成と言えるような
監督の持ち得る術を全て使ってオッペンハイマーという人物に無理やり感情移入をさせ彼を少しでも理解させられてしまう、本当に恐ろしい映画でした。

クリストファーノーランが伝記映画を作るとここまで面白いものを作れるのかと、一伝記映画として最高の出来だったと思います。

それに加えて冒頭で提示される、彼がアインシュタインに何を伝えたのか、そして時間を超えて繰り広げられるオッペンハイマーvsストローズとの法廷劇。
法廷ミステリー的な伝記映画としても本当にクオリティの高い素晴らしい作品でもありました。



しかし冒頭でも示されていた様にこの映画は多くの罪を犯してしまったオッペンハイマーの罪の物語でした。
その罪に対する描写が何処までも重く生々しく表現されていて
特にジーンタットロックの徹底的に愛人として描かれる描写は本当に胸が抉られました。

そして何よりオッペンハイマーの最大の罪として描かれているマンハッタン計画。
世界が変えられてしまうトリニティ実験が開始され、カウントダウンのシーンから実際に原爆が爆発する一連のシークエンスは自分の人生においても一二を争う程の恐怖体験でした。

さらにその罪はオッペンハイマーだけには留まらず、原爆というものを手に入れた人類に対しても深く言及されていました。
特に実験後の祝賀会のシーンは動悸を感じるほどに恐怖だけではないそれ以上の感情に襲われました。



そして最後にこの映画の様々な罪に対する投げかけの矛先は、原爆というものを手にして変わってしまった世界を今も生きている我々にも向けられているように強く感じました。
SotaroMaki

SotaroMaki