ミヤマレベッカ

オッペンハイマーのミヤマレベッカのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
見ようかどうか迷いに迷って公開から数ヶ月経ち、ようやく鑑賞。結果、見てよかったです。
少なくとも自分にはオッペンハイマーを英雄視した作品には見えないし、作り手側の政治的な主張も極端に寄っているようにも見えず。絶妙なバランスの映画でした。
紛争が絶えず、核兵器の脅威を忘れかけている世代がいる今の時代にこそ、作る意味がある映画かもな、とも。ただやはり、劇中の「日本のどこに原爆を落とすか」という会議は見ていて本当にしんどい。人間は、手にした“道具”を使わずにはいられない。あの会議の恐ろしさが見た人に伝わって欲しいと思わずにはいられません。
大量破壊兵器を作り上げてしまった物理学者オッペンハイマーの心情をヒューマンドラマとして丁寧に掘り下げた作品なので、ノーラン監督らしい科学的な難しいアレコレはかなり抑えめです。複数の時間軸が錯綜しますが、一部のシーンをモノクロにするなどして観客がなるべく混乱しないように作り込んであり、ノーラン監督もこのテーマを扱うにあたってめちゃくちゃ慎重に作ったであろうことが伝わる演出でした。しかもそれでいて映画としての完成度は驚くほど高いのだから、やはりすんごい人なんだなとしみじみ思ったのでした。
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