Keizysoze

オッペンハイマーのKeizysozeのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.3
【オッペンハイマー Oppenheimer】
★★★★☆ 4.3点
#2023年製作 
#2024年映画メモ
#映画館 で鑑賞

【彼は救世主か、破壊者か】

\作品情報とみどころPOINTは投稿スライドをCHECK/

名実共に2023年度の代表作となった本作。
公開初日に観てきました。

率直な感想を述べると
「面白いという感情よりも人物相関と時代背景の情報量に圧倒されました」


確かに素晴らしかった。
歴史上の実在の人物に対して限りなく忠実で
限界まで当時の史実を、時を使うスタンドのノーラン節炸裂で効果的に表現していた作品だったのは間違いないです。

今年のアカデミー賞でも下馬評通りほぼ圧勝で主要部門総なめの大成功作となり、監督のクリストファー・ノーランにとっては悲願の監督賞&作品賞オスカー初受賞となりました🏆

ただ、日本人であることを抜きにしても本作が称賛された功績と同時に功罪を感じたのも事実です。特に後者は個人的には今後の映画界に対する憂いも感じています。

詳細についてはDiscover usのコラムで紹介しているのでよろしければ見てみてください💁🏻‍♂️

本作を観た後、心から面白いというよりは
“ 圧倒的に置いて行かれた気分”になりました。
言い換えると「歴史的重大史実に目をそらされ続けた日本人の前提知識では到底理解が追い付かない」です。

歴史背景や人物が”常識”として刷り込まれているアメリカ人の知識ベースが前提にある造りになっているため、他国の人(日本含む)はそのレベルまで事前予習することが求められています。

【核を経験した唯一の被爆国】としてこの時期の史実については残念ながら日本の教育は限りなく限定的・主観的で、世界から見た場合、我々の認識は世界のそれとは異質である事が明るみにされたこととも思います。

私はそれなりに事前予習したつもりでしたが“観た”とは言えず、圧倒的に“感じただけ”でした。
内容を現場で咀嚼・理解できずにただただ映像と自分が知らなかった事実に圧倒されただけといった感じです。

よって初見では本作の良さを我々が感じ取るためには我々が習っていない客観的な歴史の予習と核を正当化されているという衝撃的事実に対する覚悟が必要となってくると思います。

一方ノーランの撮影はさすがでした。
内容は史実なので歴史を曲げることはできない中、
IMAXモノクロアナログ撮影を駆使して
オッペンハイマー自身が見た世界=カラー
それ以外=モノクロ
と分けて表現したノーラン監督の手法は驚きました。

またキャスティングも歴代ノーラン作品を支えていた演者達が集結し、ドジャーズの様なオールスター軍団のよう。

個人的にはR15指定の立役者😂フローレンスピューと
自身の20年後の姿になりきったロバートダウニーJr.
まさかの登場ゲイリーオールドマンが素晴らしかった👏

映画としては素晴らしいです。
今後も語り継がれる作品になるでしょう。

ただ、改めて私がここまでハマった『映画』
というものを考えた時、
銀幕で見ている側から感情が溢れ出る、
『ニューシネマパラダイス』のトト少年の様に
目を輝かせて没頭し、自分の感情として声や表情に吐き出せる。

そんな映画が好きだったしこれからも主流であって欲しいと思っています。

本作もそうですが昨今の映画の複雑化、長時間化は
現場では咀嚼できず、無表情、ノーコメントで家路に帰る自分もいて少し寂しいのも事実です。

どちらのタイプも大好きですし、共存できると思っていますが観る側にとってはバランスよく見ていく必要がいるかなと思いました。

万人が気兼ねなく映画を楽しめる選択肢がこれからもあって欲しいな、とふとオッペンハイマーを観て思いました。
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