MasaichiYaguchi

アクトレス・モンタージュのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

アクトレス・モンタージュ(2021年製作の映画)
3.6
「乞食と役者は三日やったらやめられない」という言葉を耳にしたことがあるが、本作を観ていると、その意味が何となく分かるような気がする。
私を含め毎日電車で会社に通う人からすれば、誰からも束縛されず、思うさまゴロゴロと働かないで居られる乞食という立場は、面子や見栄を捨てて、自由を何よりも掛け替えのないものと思えたら、幸せな生き方なのかもしれない。
ただ役者の方は、劇中でも描かれるが、年がら年中厳しい訓練と演出のシゴキを伴う仕事は、三日やったらやめられないなんて人によっては信じ難いかもしれない。
だが芝居の上演される日は、観客にとって劇場はまるでお祭り空間である。
それを仕事にしている役者とは、毎日をお祭りのあの興奮とときめきの中に身をおかなければ我慢出来ない中毒患者なのかもしれない。
本作には女優を目指す立場の違う4人の女性たちが登場する。
薬と宗教に助けを求めた地下アイドル、大きなチャンスの舞台でパワハラに耐える新人、娘を授かったことで夢より現実を選んだ主婦、田舎から上京して夢を実現させたい女の子、このバラバラな彼女たちは女優という一つの夢のもとで交錯していく。
或る意味、本作は芸能界あるあるドラマといえると思うが、登場する4人の売れない女優たちは夫々終盤で“重大な局面”を迎える。
果たして立ちはだかるものに対して彼女らは、どう対処していくのか?
この作品は、女優を志す女性たちの姿を通し、困難な状況でも諦めないで前を向く勇気をエールと共に描いていると思う。