サンヨンイチ

四畳半タイムマシンブルースのサンヨンイチのレビュー・感想・評価

4.3
これはまた、
いいー作品に出会った。
ヨーロッパ企画『あんなに優しかったゴーレム』を鑑賞した直後、
なんとなく上田誠信者になりかけていたところに
本作にたどり着いた。


冒頭からウダウダと語り流される
角張った日本語が妙に心地よい。
あれよあれよと矢継ぎ早に流れ行く情報量、
のらりくらりと動くアニメーションが
中毒性をはらむ化学反応を生み出している。
これに慣れてしまうのは非常に危険だ。
真似をしようものなら
大抵は薄ら寒い
分かってます的なオフビートにまみれたテンポの掴めない作品になることだろう。

それくらい、キャラクターの配置とバランスが絶妙だ。
小津だけでも駄目、
樋口だけでも駄目、
もう一人いると邪魔。

リアリティあるキャラクターとファンタジーなキャラクター。
“四畳半”と“タイムマシン”。
現実と空想が入り交じる交差点には
ありそうでない淡い恋がどちらにつくべきか右往左往している。
突拍子もないファンタジーの力を行使しながらも
振り子の如く、
明石さんを我が物にしようと手繰り寄せる“私”。

理想なんてくそくらえ。