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イニシェリン島の精霊のvanillaのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.5
しょんぼりしたコリンファレルでも見てやるかと思って行ったら思ってた以上にしょんぼりしてて悲しくなっちゃった。
原題はイニシェリン島のバンシー、人が亡くなる前に家の前で泣くあいつ

100年前のアイルランドの離島の小さな小さな村の話
一件しかないパブ、情報漏洩親父、暴力警官、勝手に人の手紙を開封する郵便局員etc..
こんな小さなコミュニティで、突然老年性の鬱か何かになった友人に「意識高く余生生きたいからお前と友達辞めるわ!」と言われてしまうコリンファレル。無理やろ。かわいそ〜

いません?「自分はいい人なのに、悪口にも加担しないし真面目なのに、何故か好かれないんです!」って人。それはあなたが知性も感性も教養にも欠ける面白みがなくて一緒にいてつまらない人間だからです。ただしイケメンに限るとかではないんです。
あととっくに振られてるのに理由もはっきり言われてるのに、「なんかよくわからないしとりあえず仲直りしよ^^機嫌直して^^」みたいな人。あんなに優しかったじゃん!違う違う、その優しさが無限に湧いてくると思って飲み尽くしたのはお前
いるんだよなー、最初に出てくるセリフが「俺の飯どうすんねん!」なやつ。しばくぞ

都会であれば、人生の選択肢がたくさんあればそっと距離を置くこともできるけど、こういう田舎ではまず出て行く、という選択肢を持つことすら難しい。ましてや本土は内戦中。
私は奇跡的にさっさと田舎からでてきた身だからよく知っている。田舎の人間関係や政治に文句を言いながら田舎から出ない人の存在を。郵便局で名前を書いたら「あら、○○大学行った子?」と聞いてくる郵便局員を。図書館に行かず本も読まず、大学にも行かなかった小学校の同級生たちを。いじめられてもハブられても友達いなくても他に行く場所のない絶望感を。
本を読んでも誰とも共有できず、オシャレをすれば悪目立ちし、いつかこの島を出て行けたらなと思ってしまったから不幸になる。出ていけないのなら、毎日酒を飲んで時間を潰すだけで幸せを感じられる方がきっと賢い。
そんな田舎捨てればいいじゃん!土地とか家畜とか他の人にやらせればいいじゃん!と言われても他の人って?それがどうしてもできない場所はあるのです。

バリーコーガンくんは特にカッコいい役ではないけど、相変わらずの年齢不詳で良
ぼんやりした造りの顔と透明でミステリアスな青い目のギャップがたまらんよね
エターナルズがイケメンすぎたから忘れてたけど本来こういう役者さんやったな

見てる間は面白かったはずなんだけと、エンドロール見てたらいやおっさんずっと何してんねんって気持ちになった
戦争ってこうやって始まるんやなって。
アイルランドの広大な石壁の続く景色がとても素敵だった。コリンファレルの着てた襟ちょっとついた変なセーターも可愛い。
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