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イニシェリン島の精霊のTPのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

 どうも本作はコメディに分類されているようだ。確かに内容的にはコメディという分類でおかしくないと思うのだが、「スリー・ビルボード」を監督した舞台出身の監督というだけあって、非常に硬質で緊迫した空気感の中、ストーリーは展開し、役者たちの達者な演技もあってとても笑えるという内容ではない。

 残り少ない人生を自分の好きなバイオリン演奏と作曲に打ち込もうと、素朴でいいやつだが実のない話ばかりするパードリックに絶縁を告げるコルムの心情はわからなくはない。
 しかしその徹底を図るための交換条件はやはり滑稽で、初老に差し掛かって精神的に異常をきたしていると感じざるを得ない。
 結局左手の指をすべてなくし、バイオリンを弾けなくなって初めて、自分の行為の愚かさを知って仲直りを申し出るパードリックは確かに滑稽である。

 孤独な島の閉鎖的な住民たちの歪な仲間意識、精神構造は、過去にも頻繁に映画の中で描かれていて、本作もそれをベースにしている。
 そんな環境の中で意固地になった男同士の憎しみ合いは度を過ぎて戻るところを失ってしまう。
 それは今のロシア-ウクライナ戦争にそのまま当てはめることができ、なかなか深読みさせる映画ではあるし、非常に完成度も高いのだが、全く救われない内容のまま終わり、観終わった後もどんよりとした暗い気持ちを引きずることになるので評価としてはあまり上がらない。
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