ギサク

イニシェリン島の精霊のギサクのネタバレレビュー・内容・結末

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

友情の話なので切り落とした指を友達のポップコーン袋に入れてドキドキ鑑賞。なんて。ある意味コルムやばい。だが軸がぶれないところは本当にすごいと思う。

みんな現実と向き合うことを恐れそれぞれ夢を見ているんだなと思った。人生の価値を死んでから決めようとするコルムの気持ち、わかったりわからなかったり。でも正直自分の考え方はナイスガイパードリックよりかな。そりゃ誰だってベートーヴェンみたいな恒久的価値のある影響を残した人間として覚えられたいだろう。だがベートーヴェンのようなそういった爪痕を世界に残せる人は限られている。それをコルムはきっとわかりながらも「死んでからパードリックのような友達に覚えられるだけじゃ物足りない」と思ったんだから、パードリックも傷ついて当然だろうなと思った。パードリックがシボンのことが大好きなように、シボンがパードリックのことが大好きなように、大好きな人さえ覚えてくれればそれだけで良いのではと。それを「足りない」と思うのがきっと人間っぽいんだろうな。人はいつもこうやって足りない足りないと言うのでいつになったら足りるんだろうと思った。足りると思ったところで内なる戦争は終わるのかなと。それでも人は一瞬にして再び足りないと思うのだろう。

全く、嫌いになれないキャラクターたちだ….とにかくキャストの繊細な演技がうまい。お酒を飲んでる割には静かな作品。相変わらず悲しく、楽しく、ユーモアがある。パードリックとコルムの友情をアイルランド内戦と対照しているのが好き。ジェニー乾杯ー!!!
ギサク

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