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イニシェリン島の精霊のleylaのレビュー・感想・評価

イニシェリン島の精霊(2022年製作の映画)
3.8
友人から突然「絶交」を言い渡され、もし話しかけたら自分の指を1本ずつ切り落とす。とヘンテコで不条理な物語。マーティン・マクドナー監督、さすがに面白い。好みではないけど。

今作の時代設定がアイルランド内戦が始まって間もなく。内戦は昨日までの隣人が敵になるので戦争よりある意味タチが悪い。主人公のパードリックとコルムも内戦を連想せます。

人は些細なことで争い、思い込みや思い違いで相手のことを無視したり攻撃する。人間とは、戦争とは、そういうことだよね。ってことかと思う。

島を出ていく妹や、対岸の火事として2人を見てるだけの島民たち、深入りした唯一の人間(コーガン)は亡くなる。その辺も内戦のメタファーに思えてくる。

動物と死神みたいなお婆さん(あれが精霊⁈)が出てくるので寓話感があり、嫌な話を中和させている。ロバはパードリック(コリン・ファレル)の分身のようで、ロバの死を境に復讐に転じる。しかし、犬は傷つけなくて、この2人が動物に優しいのが救いだった。

アイルランド諸島の雄大な自然と人間の些細な争いとの対比が見どころ。

「内戦は終わらない 
終わりにできないものもある」

アイルランド内戦の不条理さを匂わせる作品でした。

コリン・ファレルの下がり眉がこの役にはぴったりでコメディ感も出してる。バリー・コーガンも相変わらずいい仕事してます。

たいして働かず毎日昼から呑んで、やたら話の長い奴なんて絶交されてもしょうがないかも。指を切り落とす異常な爺さんは面白かったけど好きにはなれない。妹だけがまともに見えた。
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