JAZZのLIVEとしては満点だけど、自分が「映画」に求めるものはこれではないな〜とも思う。
原作ファン(読んだのがかなり前なので詳細は覚えてない)だけど、省略が多くて、音楽の魅力にストーリーが付いて来れてないな…という印象。
仙台編・恋愛などの要素が丸々省かれていて、わかりやすく劇的な「少年漫画」になっている。
玉田は突然目覚めて突然上手くなるし、大の葛藤はほとんど描かれないし、唯一人間味が感じられる雪祈には外的で劇的な障害が与えられるという都合の良さを尚更感じてしまう。
平さんに酷評されて豆腐屋に謝りに行くとかかなり胸を打たれる(どんな才能も独りでは壁を越えられない)し、スラムダンクのように主人公を雪祈に絞るとかしても良かったのではないか…?
SO BLUEまで描き切るのは必要だったんだろうけど、こんなに断片的なストーリーだったか…?と期待はずれに感じた。
脚本のNUMBER 8って、担当編集の方らしい、協力でスクリプトドクターの三宅さんも入ってたけど、原作モノって難しいんだなぁ。
セリフの青臭さとか派手な音楽演出とか、漫画では魅力的に感じたものが、映像になると少しオーバーに感じて気になった。
そもそも「音が聴こえてくる漫画」を映像にするってかなり捻れた企画ではあって、モーキャプとか映像技術的にも工夫をしてるのはわかったけど、期待は超えてこなかった。
でもやっぱり初期衝動の美しさって尊い。まさに音楽に捧げた青春だったから、シングストリートや坂道のアポロンやBECKに背中を押されていた思春期を思い出すとともに、あの頃の自分に恥ずかしくない大人として生きようと思わされた。
上原ひろみが書き下ろしているというだけでもすごく意味のある作品で、サントラは繰り返し聴くことになりそう。原作読み返したいし、久々にブルーノート行きたくなった。
表現的に好きだったのは、線画的な絵が入ってくるところ(全体的にCGよりも手書き系の方がグッときた)と、人物に陰影のようなものが足されて描かれていること。『バクマン』や『スラムダンク』のように漫画の映画化としての表現をもう少し追求してもよかったように感じる。
※原作でも巻末で描かれていた未来のインタビュー、漫画というクールなメディアにおいては読み進めるモチベーションとして効果的に機能していたけど、映画というホットなメディアでこれをやられると、流れを分断してわざわざネタバレしているように感じてしまった。