カラン

乱れ雲のカランのレビュー・感想・評価

乱れ雲(1967年製作の映画)
3.5
通産省に勤めており、アメリカ栄転が決まった夫が交通事故で亡くなる。妻である由美子(司葉子)は妊娠中だった。事故を起こしたのは通産省に頭が上がらない商事会社の三島(加山雄三)は事故の裁判で無罪となった後、由美子に金を届ける。。。


三島 : 加山雄三
由美子 : 司葉子
常務の娘 : 浜美枝


無罪であるが青森に左遷されることになった三島が部屋に戻ると、常務の娘が待っている。開け放した窓を背にして光を纏ったブルーのセットアップの彼女はとても素敵である。で、青森に一緒に行ってくれと頼むと、断られるが、彼女は微笑んで窓を閉めてカーテンを閉じる。見つめ合ってしばらく三島は窓を開けて彼女を見る。彼女がバックを取ると、部屋の鍵が光り、そのまま彼女は出て行く。つまり、常務の娘はお別れのセックスを誘ったのだが、三島は断ったということ。

常務の娘さんとやらない理由は、①加山雄三が爽やかアイドルであるので事務所から止められていたから、②人を轢き殺した後でいきなり女とやるのは不謹慎だから、③青森に一緒に行くのを常務の娘に断られた直後であるので彼女とやりたくなかったから。はて。

①の可能性は芸術的観点ではまったく話にならないので、放置しよう。

②はその後の展開で、「(旦那を引き殺しちゃったけど)ぼくは君のことが好きだなぁ、ハッハッハッ」みたいにいきなり告って、軽い紆余曲折の後で連れ込み宿に連れ込むくらいに陽キャな人物なので、たぶんない。

かくて、③が正解ということになる。えら〜くどうでもいい小市民的動機で、加山雄三演じる三島は浜美枝演じる常務の娘とやらないというところから始まり、自分は悪くないが金をどうしても受け取ってほしいだの「ぼくは悪くないのだからそんな目で見ないでほしい」という逆ギレだのが長々と続いた果てに、山菜採りをしている由美子に背後から近づいて、麦茶飲みながら、告る。それで連れ込み宿(ラブホ)に行って、これまた窓辺に立つと、由美子の陰キャぶりが甚だしく感じられて、やらない。

要するに、本作はやらないエロビなのである。1度目は結婚を拒まれた相手に誘われて、やらない、と窓辺で。2度目はやろうやろうって自分で未亡人を誘って、やらない、とやはり窓辺で決める。


撮影もただ話している人物を真ん中に据えているだけ。十和田湖とかどうしたものか。室内の美術もかなり厳しい。フレーム内で目の欲望を促進するものが極めて乏しいのである。見るべきと思わせる要素が1つのショット中に小津安二郎の10分の1くらいだろうか。異常に強度の低い画面作りである。いったいぜんたい、小津、溝口、黒澤に次ぐ、、、という成瀬巳喜男に関する評は、どの作品のことなのだろう。本作でないのは間違いないのだろうが、次はフィルマポイントを参考に吟味するとしよう。(^^)


レンタルDVD。全てがなんでもない。びっくりした。
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