だいごろー

乱れ雲のだいごろーのレビュー・感想・評価

乱れ雲(1967年製作の映画)
4.5
@神保町シアター

成瀬の遺作。ずっと見逃して作品なんだけどこれは凄かった。やっぱり後期成瀬は傑作揃い。

夫を交通事故で亡くした妻と、その加害者青年の恋を司葉子と加山雄三が演じる。

前半はやたらお金の話をしてるくる草笛光子、森光子の逞しさが成瀬らしく面白い。

思いが抑えきれずに迫る加山と、2人の関係は許されないと拒む司葉子。
それでも、海外転勤に行くことが決まり、もう会えなくなってしまう状況に置かれて司は加山のもとに向かう。加山の家を訪れて2人が再会するシーンの撮り方がすごく良かった。階段の上と下に配置された2人、司が階段をゆっくりと登る一歩、加山の複雑な表情にグッときた。
そこから2人は結ばれるべく、物語は展開して行くのだが、湖でカップルが心中したというニュースから、死のモチーフが連続して出てくる展開が凄まじい。
重苦しいタクシーの中、目的地に向かう途中の踏切、交通事故現場、目的地に着いてからも救急車のサイレン…
2人は生きているのか、死んでいるのか分からなくなってくる。

愛の果てに2人が辿り着く先とは…
遺作にこんな恐ろしいメロドラマの極地とも言える作品を撮ったなんてやはり成瀬は偉大な監督だと思った。