桃

デリシュ!の桃のネタバレレビュー・内容・結末

デリシュ!(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

2024年6作品目。

世界で初めてレストランを作った男の実話をもとにした映画なのだそう。
時は1789年、フランス革命前夜。

博物館の歴史を学んだ時、貴族の権威を示すものとして、秘められたものであったミュージアムが、開けた時代を知ったが、その時期にほぼ等しい。

シェフの美味しい食事を食べられるのも、貴族の特権であった。

食とは。

市政の人々の民藝的な食事も絶品ではあると思うが、ある種の"選手"的存在のシェフが作り出す、これだというメニューたちは、食べる人を驚かせる。
食材を喜ばせる。

映画の冒頭の、マンスロンが伯爵の豪邸地下料理室にて、料理人たちに問うていた料理のススメも、食・食材への愛が込められている。
物語の中盤の、ルイーズに各食材の味を確かめさせるシーンも
素材の良さを知らないと美味しい料理はできないという哲学を教えている。

最近読んだ『食べたくなる本』での、拘りわ突き詰めた料理家達の話を思い出しながら、マンスロンの料理に向けての拘りを感じていた。
やはり、美食家である程に、各素材へのリスペクトが特に強いように思う。
各楽器の音を際立たせながら調和をつくっていく指揮者のように、アイドルの良さを極限までステージで魅せたいプロデューサーのように(なのかはわからないが)。

映画の中のメニューは
食べたいなと思うメニューばかり。

マンスロンのつくったパン、
ルイーズのつくったゼリー、
各場面でずっと艶々と焼かれているチキン、
テーブルに注いで回られている謎のシチューらしきもの、
貧しき時代の栗のスープ、
村の娘たちに振る舞われたチキン煮込み、
そして何より、ジャガイモとトリュフをパイで包んだ、"デリシュ"。

ラストの、イチャイチャした2人が作っているパンも美味しいんでしょうな。
バターたっぷり乗せて食べたいものです。

そして、食の楽しみと加えて、
映像美も素晴らしかったですね。
陰翳と窓から差し込む光がたまりません。
雪の降るのと、小麦粉の雨のがまた美しく。
庭先の緑も美しかったです。
修道女院も綺麗だった。

シーンとしては、やはり
伯爵を招待しつつ、無料で町の人々を招待
したのが爽快でしたね。
食をすべての人に開くという象徴的シーンでした。

どんな人も完璧ではないけれど、
真面目に頑張る人にはきっといいことがあるし、楽しそうに挑戦する人には味方が増えていく。
そんなことを思いながら、伯爵の召使の今後を想像していたのでした。
桃