すー

ラーゲリより愛を込めてのすーのネタバレレビュー・内容・結末

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

初日に舞台挨拶中継付き上映会を観に行きました。

シベリア抑留がテーマなので観るから重たいイメージをどうしても抱いてしまっていたのですが……実際鑑賞してからは重く暗い中にも一筋の光を感じられる作品でした。

"戦後の混乱の中で起こった不幸な出来事に過ぎない"

劇中で二宮さん演じる山本幡男さんが話した言葉でとても印象に残った言葉です。
戦後の混乱の中、罪もなく極寒の劣悪な環境下で、充分な食糧もなく強制労働を強いられ、遠く離れた祖国で暮らす家族の安否すら分からないまま10年以上もの時が流れている。
日本は既に戦後の復興も進んでいても、ずっとシベリア抑留者の時は戦後のまま止まってしまっているように感じられて、そのなかで無念にも遠い北の大地で亡くなられた方も多くいたのだと、これが単なる不幸という一言で済まされる出来事なのだろうかと…こんな悲惨な出来事が実際に起こった史実であることを改めて受け止めました。

また、ソ連兵だけでなくラーゲリ内での日本抑留者間の卑怯なやりとりや、戦禍で様々な心の傷を負った方々を見て、戦争がもたらす悲劇は表立って見えること以外にもここまで根深いのだと改めて感じました。

現在も世界で戦争が起こっていますが、例えこの戦争が終わったとしてもその後もこうした苦しみが続くのだと、だからこそ戦争を起こしてはならないのだと、戦争を知らない世代の私の心に深く刻まれました。

中盤まで絶望的なまでに辛く悲しい出来事の連続で見ているこちらもしんどかったですが、中島健人さん演じる新谷武雄さんとクロの存在が希望の光のように感じられ、癒されました。新ちゃんの眩しいばかりの笑顔や静かに零す涙に感情を揺さぶられました。そしてクロが帰国する日本船を追って氷海に飛び込むシーンは見ていて胸が張り裂けそうでした。

また、山本さんが病に伏せてからの二宮さんの声の演技も圧巻でした。声から病状の進行具合が感じ取れてしまう…二宮さんの演技力に改めて感動しました。

この作品を通じて感じたことは、誰かの絶望が誰かの希望にもなりうること、つまりどんなに絶望的な状況下でも希望はあるのだと感じました。
そして、大切な人と当たり前のように過ごせる今がどんなに幸せなことか改めて身にしみました。この幸せをずっと守り続けるためにもこの史実は後世に伝え続けなければならないと思いましたし、この作品を通じて少しですが知ることができて本当によかったです。

この作品がより多くの人のもとに届くことを願っています。
すー

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