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ラーゲリより愛を込めてのタクのレビュー・感想・評価

ラーゲリより愛を込めて(2022年製作の映画)
4.0
シベリア抑留…第二次世界大戦後、日本兵がシベリアに強制労働させられ、60万人の中6万人が死亡した、恐ろしい歴史。
この映画は11年にも及ぶ抑留生活の中生きる希望を諦めず皆に希望の光を灯び続けた山本幡男の物語である。
[キャスト]
      二宮和也 
   北川景子  松坂桃李
奥野瑛太 金井勇太 中島歩 田辺桃子
  酒向芳 市毛良枝 山中崇
中島健人 桐谷健太 寺尾聰 安田顕
[監督] 瀬々敬久
[感想]
〈・本作の大まかな感想〉
本作の構成は松坂桃李目線から見る山本幡長(二宮和也)と、ラーゲリ内での活動や、ラーゲリでの悲惨な出来事を11年間に渡って描くパートが大半であり、その隙間に日本で4人の子供を大事に育てる様子が描かれます。

前半は、シベリア抑留の過酷さ、悲惨さを描く部分が多く、中盤までもラーゲリ内での山本幡男や、その周りの人々の心理描写、山本と関わってどうなっていくのか?
というラーゲリ内での人々の行動や気持ちの変化を描くのが主軸となって進んでいきます。

そして、後半からラストにかけては、二宮和也の演技や、宣伝でも何度も言っていた
絶望の中での「奇跡」が一体何なのか、後半からのシーンは素晴らしいものでした✨

大まかな感想の前に、私の本作に対する想いを語りたいと思います。
〈観る前のモチベーション〉
本作の詳細を知ったのは、半年以上前でした。 本作を観るまでにシベリア抑留、シベリア抑留を経験した方々の話YouTubeで聞いたりして、想像できない位過酷な物だと認識しました。
勿論、原作の大まかな内容や山本幡男がどんな人物だったのかある程度理解して本作に挑みました。
正直単独作品の中でここまで予習したり、
人生においても自ら歴史に対して勉強することもなかったので、本作に対する想いは今年一番と言っていい程真剣なものでした。

この話を踏まえた上で本作の感想としては、、、、。
ちょっと優しすぎる映画かな??と感じましたし、予告や主題歌で涙した私ですが、意外と感動しなかったというのが正直な感想です。

まず、優しすぎるというのは、シベリア抑留の過酷さが色々調べた私からしたら、意外と史実に基づいて描かれてない部分があるし、後半からはラーゲリ内での過酷さという要素は薄れつつあり、感動路線に切り替えてる感を感じたので、ラーゲリでの過酷さは常に感じられるよう描いて欲しかったです。
シベリア抑留を経験した方は、食事に関しては常に苦労したと語られていたが、本作は食料事情に関しては、そこまで苦労した様子は伺えなく、若干の違和感や、、、
栄養失調や、固い物を食べていたせいで歯が抜けてたり、金属に皮膚で直接触ると離れず、切断か皮膚を剥がすしか選択肢がなかったり、体重も抑留されていた間に半減したという話があったが、本作はそこに対するリアリティが足りなかったり、そのシーンも無かったりしたので、シベリア抑留に対する過酷さリアリティさに欠けるものはありましたね。

しかし、序盤に描かれる山本幡男に対する非道な仕打ちは、苦手な人にはキツイシーンに感じるので、そこは万人受けする様に
ある程度線を引いていたように思います。

あと、私のミスではありますが本作の原作である「ラーゲリから来た遺書」の概要を大分知ってしまっていたということが、ラストの感動シーンで泣けなかった。
しかし、ラストのシーンはそれぞれのキャラが山本を想いながら遺書を朗読する姿は
それぞれ抜群の演技力でしたし、妻である北川景子の泣き姿には、こちらの涙の結界も壊れてしまいました。
終盤のシーンはタイトルの「愛を込めて」
の意味がそこに集約されていると感じました。

総評としては、、シベリア抑留での人物の状態のリアリティさが若干足りないこと。
終盤にかけての感動路線が思った以上に泣けなかったが、映像になり、言葉になり伝わってくると心にグッと来るシーンで、良かった。
けれど、もう少しシベリア抑留の過酷さ、
人物の心境変化を丁寧に描くべきだったと思いました。
終盤のシーンは素敵でした✨

[演技派の勢揃い!!]
本作やはり素晴らしいのは二宮和也。
もはやニノには、見えずシベリアで日本人に希望を与え続けた偉人山本幡男にしっかりと見えました。
特に後半の癌に侵されながら、訴えかけるシーンは正直、驚きました。
身体的な変化から、心境的な変化すべての変化を見事に演じた彼は素晴らしいです✨
本作は、ニノ有りきの作品です!

他にも松坂桃李、桐谷健太、安田顕という豪華な俳優陣で制作した意味があるなと常々思いました。 山本幡男に焦点を当てつつも周りの人物の心境の変化や、行動も丁寧に描いているので、豪華なキャストで観れて良かったと思いました。

意外と良かったのが、中島健人です。
本作のオリジナルキャラクターではあるが、彼が居ると居ないでは作品の雰囲気が変わるなと感じました。
ラーゲリ内で唯一明るく、堅実なキャラではあるが読み書きが出来ないというのが一つのみそでして、、山本と関わったことにより読み書きの練習をしていきます。
彼がラーゲリ内で一番成長したと感じられるキャラでした。しかもそんな彼が遺書を暗記しようと言い出しのが、感動物でした
作品の中でも異質な存在だったのが、凄く良かったです!

[最後に]
見終わったあと、やはり心に残る作品であることは間違いありません!!
ラーゲリ内での辛いシーンはありますし、結末も悲しいものではあるが、、、
過酷な環境の中で希望を与え生き続けた山本の存在感、希望を貰い山本の為に起した行動の数々、夫婦の愛、このシーンを見る意味が今の現代社会には有るなと思います。

シベリア抑留という歴史を題材にしつつ、
山本幡男の生涯を映画で今の人々に伝えられた本作は、沢山の人に観て欲しいです。

辛そうだな、戦争物苦手だなぁと思っても、結末はそういった苦手要素を忘れる位素敵な映画になってるので、本当に観て欲しいです!
タク

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