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燃えあがる女性記者たちのMKのレビュー・感想・評価

燃えあがる女性記者たち(2021年製作の映画)
4.3
この映画を観て、これまでも使ってないし、言葉そのものに差別の意図はないにせよ、スクール・カーストなどとという言葉を使うのは控えようとより思った。

ダリト…ヒンドゥー教における不可触民を表す言葉。触ることだけでなく見ることも声を聞くことも穢らわしいだなんて、誰かに対して偉そうだな人間。

村人たちから忌み嫌われ人々が蔑む仕事をさせられ、何かあれば人としての尊厳もなく辱めを受けたり殺められてしまうという、社会制度が生み出した何とも表現しようのない存在。

どこかの国にも同じような制度があったような気がするけど。。

そんなカースト制度の外に置かれた階級の存在を知ったのは『13億人のトイレ』という新書のおかげ。

この作品はトイレをモチーフとして、穢れを忌み嫌うヒンドゥー教徒が排泄物を穢れとし、トイレなどという穢れを溜め置くものなど設置しないという慣習と、トイレを文明的なもの、発展の象徴として全国民にトイレ使用を推し進めようとした「インド浄化作戦」などという何とも皮肉な和訳を与えられた政策を掲げたモディ政権を取沙汰したものだった。

そんな忌み嫌われたモノの処分を最下級のダリトが行うという皮肉を上手く描いた作品だったけど、その辺りの理解が 本作を観る大きな助けとなった。

穢れを排出する穢れなき人々
穢れなき人々の穢れを浄化する穢れた人々
穢れた人々を浄化せんとする穢れなき人々

何とも皮肉で残念なループ

社会に不可欠なモノなのに目を背けて不可欠なものを都合のいい存在に割り当て、押し付けそれを忌み嫌うだなんて。

手を替え品を替えそんな制度は世の中にありふれているし、自分もそれらに加担さえしているかも知れないけど、自分には同じ人間にしかみえないものが、価値観によって違うものに見えるのだとしたら、他人事ではないとも思う。

そのあたりは本作の本質ではないけど、そんなダリトに位置する女性たちがジャーナリストとして社会問題に立ち向かい、取り上げ、取り沙汰すべくSNSに取材動画を投稿。

動画再生回数は鰻登り、看過できなくなった政府は次第に社会問題への対応を余儀なくされていくという痛快な展開だった。

母なるインドと言うくせに、女性の身分が守られていないなんて許せない、とは作中の登場人物のセリフに近い言葉。

そんな母なるインドで女性たちがますます活躍することを願うばかり。

少し怖さを感じたのは取り上げ、対処された事象とそれに関与する人々の後日談がないこと。

階級差を理由に殺人まで起きると見聞きしたこの手の話、報道後に報復を受けている人がいるのではとなんとも恐ろしくなった。

よく国のことも文化も宗教もよく知りもしない立場だから言及はできないけど、浅はかな優遇、救済は更なる差別が生まれるきっかけになるので本作をきっかけにもう少し勉強したい。

ヒンドゥー・ナショナリズムに傾倒しているらしいとも聞くインドも大分気になってきたところ。。

グレート・インディアンキッチン、パッド・マンなどなど色々勉強になる。
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