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人間の境界のMKのレビュー・感想・評価

人間の境界(2023年製作の映画)
4.2
社会的、政治的、宗教的背景などにより国を追われ、逃れヨーロッパを目指しベラルーシとポーランドの国境で翻弄され憔悴していく難民とそれを互いの国に押し戻そうとする国境警備隊の話、端的にいえば。

この前観た『ビヨンド・ユートピア』は脱北する家族にフォーカスしたドキュメントだったけど、こちらは国境警備隊と難民を支援する活動団体に焦点が多く当てられていた。

「任務」と言うことがとても印象的

「人間の知能を超越したAGIが存在したとして、彼らからみれば人類の倫理観や理想社会など、チーズで出来た家に住みたいと願うネズミの願望ほどの稚拙で低俗なものに違いない」とはマックス・テグマークの「LIFE3.0」の一節だけど、それぞれが都合のいい正義感と倫理観を振りかざして、なりふり構わない振る舞いをするところはまさに邦題の「人間の境界」のせめぎ合いのように思えて悲しかった。

わずかの間に何万人という難民が救われるコトもあれば一つの生命すら救われないコトもあるなんてどうにも理不尽。しかもそれが同じ国、同じ人間の仕業なんてどういうことなのかなと…

人間の境界は個々人のモラルや倫理観によるのかとも…作中、どの正義も正解にも不正解にも思える瞬間が何度もあって、超えてしまってはならない境界線が嫌と言うほど垣間見えた。

最後の少年たちのラップのシーンには唯一救われた。
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