横川百子

デューン 砂の惑星PART2の横川百子のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.0
【イマイチ映画史に残る傑作とは思えない原因を探るための4回目の鑑賞後メモ】

うん、第三幕からラストまでのプロット運び・編集はおそらく映画史に残る作品のプロット運び・編集ではない。かな…?エラソーだけど備忘録しとこ。

【初見〜3回目鑑賞後の雑感】

IMAX/GTで二回、Dolby Cinemaで一回鑑賞終了。もうPart 3公開直前まで鑑賞する事はないかなぁ…。

IMAX1.43:1で観た場合という条件付きにはなりますが、本作を観れば間違いなく映画史的に見ても最高峰のスケール感ある「画」とIMAX/GT歴代最強の「音響」を体感出来ると思います。
と同時に「画」は美学的観点から観ても最高レベルのアート性を兼ね備えた見事さで、「画」でこれらが両立出来ている事は奇跡的で本作の最大の魅力、強いては撮影監督から最良の力を引き出しそれらを生み出した監督ドゥニ・ヴィルヌーヴの特別な才能だと感じました。

がしかし…、というか、にも!かかわらず
中盤・後半の所々でなんと睡魔に襲われ(毎回同じような箇所)、実際に寝落ちしてしまう瞬間まであったという事実が私に小説や漫画原作を脚色する事の「難しさ」と「陥りやすい罠」をはっきり教えてくれたと同時に「今作が確かに傑作ではあるけれど時間の審判に屈せず映画史上語られ続けているハリウッドエンタメ作品群に肩を並べるほどの傑作ではない」という確信(当然わたしにとってはですけど)を抱かせてくれました。

具体的にごちゃごちゃ論じて言語化してクサすのも本作のようなヴィジュアル百点満点の作品には野暮ってものなのでヴィジュアル面で驚愕した素晴らしい所を一つ特筆しておくと…、

あの闘技場シークエンス。

なんで突然モノクロなーん!?
あの気色わるい花火なんなーん!?
面白すぎるやーん!!

ま、厳密に言うとレア・セドゥが覗いてた双眼鏡?の主観映像で下部に表示されてる文字列みたいなものが青色だったので、あの大部分を占めるモノクロ映像は極端に彩度を落としただけの、他のシーン連となんら違いのないあくまでカラー映像というテイなのかもしれませんが、突然カラーからモノクロに変わるからには普通、説話上の理由や演出意図が観客側になんとなくでも理解できるように目配されてる筈なのに本作にはそれが一切なく(え?日食だから?なーるほど!っておい!ドゥニこじつけ過ぎでしょ)、明らかにあの大駱駝艦麿赤兒よろしくウォーボーイズが白いから「こっちのがキレイっしょ!クールっしょ!」というノリだけでやってるとしか思えず、お前はそこまでしてキレイなもんを見せたいんかっ!と、逆に清々しさすら感じさせてくれて最高でした。(闘技場シークエンスが日食だからはイイとしてその後の夜の祝祭花火時も外はモノクロ、室内色付きだったのはなんでやさ?)

ついでに欠陥も一つだけ挙げておきますと、

やっぱり物語上特段必要では無い無駄なアクションシークエンスはいくらそれが派手で迫力があろうとも寝てしまう。という事実です。

一度目の鑑賞時、特に分析的に観ていた訳ではなかったですが、何故か眠くなるアクションシークエンスがあって(眠くなる箇所は他にも結構ありましたが)、「なんでやろ?」と漠然と感じていたのが二度目・三度目と観るうちに実は物語の説話上全く必要では無い「見せ場のためだけに創られた見せ場」であった事が意識的にわかってきてすっごく勉強になりました。
あと、ヴィルヌーヴはいわゆるブロックバスター映画的アクションを撮るのはそんなに得意ではなさそうですね…。

俳優陣ではハナ肇…あ、間違えました、ハビエル・バルデムの物語上の役割を完全に掴んだ上での演技・キャラクターの肉付けはやっぱり凄いの一言ですし、ティモシー・シャラメはルックスだけで今の地位を築いた訳ではないと納得する確固たる演技力と何と言ってもあのクローズアップで「画」が保つスター性は演技力とスター性を兼ね備えているという点でトム・クルーズを想わせると言っては言い過ぎでしょうか?
レベッカ・ファーガソンの、内に秘めた「怖さ」が染み出るようなお芝居、この人も毎度凄い!
ゼンデイヤもどの作品観ても必ず素晴らしい安定の演技力!と脚の長さは羨ましい…。

今回巷で大騒ぎのオースティン・バトラーの演技はー…、
あ!それで思い出した!!

今回もう一つ気になったのが、このオースティン・バトラーはじめ、入浴してるか宙に浮いてるかの白いハゲのデブやピューのパパがラスボス感満載のヴィラン然とした勿体振った演出されてたわりにはみんな最期かなりショボいっていうのが面白くもあり肩透かしでもありました。オースティン・バトラーの演技がジョーカーのヒース・レジャーに匹敵するって何処かで読んだけど絶対それは言い過ぎでしょ!

と、言うわけで…

【ヴィルヌーヴ作品勝手にランキング】

1. ボーダーライン(別格!)
2. メッセージ
3. プリズナーズ
4. 灼熱の魂
5. DUNE PART2
6. 複製された男(ラスト爆笑してしまった)
7. ブレードランナー2049
8. DUNE PART1
9.静かなる叫び

未見 • August 32nd on Earth
 • 渦

そーいえば知り合いが上映終了後しばらく席を立てなかったと言っていたので、私が劇場で初鑑賞時しばらく席を立てなかった数少ない作品もランキング付けは無理なのでなんとなくの製作年順?で列挙してみました。

• タイタニック
• プライベートライアン
• マトリックス
• ファイトクラブ
• ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
• ダークナイト
• インターステラー
• マッドマックス怒りのデスロード

あたりがホント上映終了後放心しました。
これ書いてて思ったけど、これらの作品に比べると「DUNE PART 2」はやっぱり鑑賞後普通に席立てたなぁ私は…。

「仏造って魂入れず」

本作が上記の作品群と肩を並べるには絶対ヴィジュアルばっかりに腐心するんじゃなくてポールの映像としては表現出来ない心の中の葛藤をエピソードやそれこそ諸々の演出でもっと丁寧に描写していくべきだったんですよっ!と。