次第に砂漠の民たちに溶け込み信望を得ていくポール。アラキスの生態系を熟知し利用できるフレメンとの協調なくしてこの星は統治できないことを圧倒的な威力で見せつける映像スケールが素晴らしい。
現代の世相や心情にマッチするよう原作小説から幾つかのエピソードは省かれたり簡略化されたりしている。台詞は大胆に削られ洗練されており、映像優位に仕上がっていると感じた。一方で大胆に膨らませたパートも。また母ジェシカとの関係描写は演出に工夫が凝らされていて、原作小説に少々不満を持っていた自分はこれら諸々の翻案にはほぼ満足。
敢えて気になった点を挙げるとすれば、原作の魅力でもある生態学的なアプローチを含めた科学パートがやや希薄になったこと。まぁ映像で見せるために徹底的に台詞を削ぎ落としたことで、ある程度はトレード・オフになってしまったのだろうけど。あとは原作よりも軟弱に見えるサーダカー、キャスティング含めフェイド=ラウサに凄みや存在感が今一つ足りなかったことなどかな。
さて、今作で物語としては原作「デューン 砂の惑星」の着地点まで到達している。「この後は自分の好きなように作らせて貰うよ」という監督の意気込みが伝わってくるような、アリア役シークレット・キャストのチラ見せや原作外にフックを掛け残した着地。はたまた原作シリーズ続編「デューン 砂漠の救世主」や「デューン砂丘の子供たち」を踏襲した続編となるか。
字幕翻訳は岸田恵子氏。