レインウォッチャー

デューン 砂の惑星PART2のレインウォッチャーのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.0
DUuuuuuuuNE.

なるほどわかった。こいつは映画じゃない。「風呂だ」。
なぜなら、映画なら「観る」「聴く」ものだけれど、これはどう考えても「浴びる」「浸かる」ものだからである。もっと言うと砂風呂である。

ポール(T・シャラメ)が砂虫ことシャイー=フルードの背に乗って広大な黄金の海を駆けるとき、そのPOV視点から飛び出してくる風の轟きを確かに感じ、顔に降りかかる砂塵をつい避け、宙に満ちたスパイスの香りを嗅ぐだろう。
4DXなんてなくとも、音と光のシャワーによっていとも簡単に次元を超えられる。顔を拭っておそるおそる目を開ければ、そこは砂の惑星アラキス…またの名をデューン、だ。

それに、今作の体験によって、砂風呂と同等の効能を確かに得ることができる。

①デトックス
ドゥニ・ヴィルヌーヴ印のとにかくなんでも「デカい」「広い」映像の圧に気付いたら涙が出てくる。いわゆる「泣ける」とはまた別の、力ずくで泣かされる感じ。結果、老廃物が排出されてリフレッシュだ。

②美肌
シャラメやゼンデイヤといった美しき戦士たちの決意に燃える眼差しに射貫かれるや否や、一時休止していた男性/女性ホルモン生産ラインがにわかに動き出す。自然と、お肌のツヤめきも一段良くなることであろう。

③体調改善
あまりの重低音に終始座席がビビりあがっているため、なんかたぶんツボとかに効く。

おわかりいただけただろうか。現状、「ととのって」劇場を出ることのできる唯一の映画、それが『DUNE Part2』なのだ。

そう、今回は『Part2』なわけだけれど、ストーリーとしては前作の続きから順当すぎるほど順当に展開していく。惑星の利権を争うお家騒動と復讐劇、そして血統にまつわる運命。規模は広がろうとも、やはり引き続き骨子はシェイクスピア的なノリであり、予想できる要素はすべてクリアされる。
2時間半超えと長尺ではあるもののイベント消化ペースはかなりサクサク、むしろ駆け足な印象で、次々「デカい」「広い」って思ってたらいつのまにか終わりつつある。今作ラストではまだ完結とはならず、これからが本番といった趣なのだけれど、前作で示された因縁はある程度決着がついたともいえて、ここらで「第一部完」って感じだろうか。

ヴィルヌーヴ監督が過去作から繰り返し描くひとつのテーマ、「避けられない運命にどう立ち向かうか?」は、この『DUNE』シリーズにも変わらず(むしろよりダイレクトに)刺さっている。
ただし、その答えはまだ次作へ持ち越し。今作では、ポールの秘めた能力が覚醒していくに従って、運命のうねりはポールの意志をはるか超えて大きくとぐろを巻き、抵抗しようとも逃れることのできない様が描かれる。果たして、彼はこの先でどんな答えに辿り着くのか。

その運命の一つの表象として、『灼熱の魂』や『メッセージ』で強調されてきた《母性》。これは言うまでもなく、ポールの母ジェシカ(R・ファーガソン)に受け継がれているところで、ポールを操って大局のすべてをコントロールしようとする様はまさに《母性》がもつ愛情とエゴの二面性の権化だ。
ポールが身を投じる家vs家の争いも、結局はジェシカが所属するベネ・ゲセリット(女系の魔術師(?)の系譜)内での権力抗争の代理戦争的な意味合いを持つことがわかってきて、この「歴史の影に女あり」感が最もおそろしい。

ヒロインのチャニ(ゼンデイヤ)とジェシカによるプチ嫁姑バトルは今作の見どころの一つだけれど、気づくのはジェシカってチャニ以上に《女》なのだ。これは前作でもそうだったポイントで、ポールは常に彼女を守り彼女に翻弄される。
今回新たに登場した女性キャラ、イルーラン(F・ピュー)もどちらかといえば機能的な役割の存在だし、やはりこのシリーズの真のプリンセス兼ファム・ファタルはジェシカなんだろう。

原作未読勢なので的外れかもしれないけれど、ヴィルヌーヴ作品史的に言えば間違いなくラスボスは母親となるはず。既にフラグは立ちまくりの中、リアルタイムで次作を待てることがとても悦ばしい。いったん、水風呂に入って備えよう。

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風呂といえばわたしの推しキャラ・ハルコンネン男爵(S・スカルスガルド)なわけだけれど、今回もゴボゴボしてくれて嬉しかった。
で、エンドロール見てたら『Harkonnen Spa Music』って文言が目に飛び込んできて笑った。オチつけるなし。

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ところで、今作で何度も活躍する《タンパー》(砂虫をおびき寄せる装置)を眺めてたら、なんとなくスタイリッシュなTENG▲みたいだなあ、とか思えてきて、それを言うならシャイー=フルードって「その中身」っぽくもあるよなあとか発展して、しばらく集中できなかったんですがこの責任は誰がとってくれるんでしょうか?(貴様ですよ)

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鳥取県では《砂歩き》デートが流行れば良いと思うの。