キャッチ30

デューン 砂の惑星PART2のキャッチ30のレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.0
 前作におけるハルコンネン家の陰謀により、アトレイデス家は全滅する。しかし、レト公爵の息子ポールとその母レディ・ジェシカは生き延び、砂漠の民フレメンの下に身を寄せていた。ポールは彼等から戦い方を学び、父の仇敵である皇帝やハルコンネン家に対して反撃に出る。やがて、彼はフレメンの女戦士・チャニと惹かれ合う。一方、ポール達の予期せぬ反撃により惑星アラキスを思い通りに支配できないハルコンネン男爵は彼の甥である戦士フェイド=ラウサを呼び寄せる。

 これだけ聞くと英雄譚の様に見えるかもしれないが、監督のドゥニ・ヴィルヌーヴは安易な見方を避ける。それはチャニの存在だ。フレメンの多くは救世主の存在を信じるが、チャニはその崇拝を危険視する。ポールが救世主に祭りあげられていけばいくほどチャニのポールに対する視線は厳しさを増す。彼女の立ち位置は同じヴィルヌーヴ作品の『ボーダーライン』のケイトと似ている。核兵器の使用や諸大領家に戦いを挑もうとする姿は蛮行のように見える。
 
 もう一つ、この映画には女性たちの暗闘という側面がある。レディ・ジェシカは息子と産まれてくる娘のためにフレメンの教母となる。女性だけの秘密結社ベネ・ゲセリットの教母ガイウス・ヘレネ・モヒアムは権力を掌握しようと皇帝を操る。ベネ・ゲセリットの一員であるレディ・フェンリングは子孫を残すためにフェイド=ラウサに接近する。男たちが闘っている背後では女たちが権謀術数を用いて暗躍しているのだ。

 ヴィルヌーヴが描く『デューン』は『アラビアのロレンス』の焼き直しのように思える。そう考えると、今作がポールの栄光で終わるとすれば、次回作の『砂漠の救世主』は彼の精神が崩壊していくに違いない。