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デューン 砂の惑星PART2のsatoshiのレビュー・感想・評価

デューン 砂の惑星PART2(2024年製作の映画)
4.7
 素晴らしかった。『PARTⅠ』のときは原作未読で臨んだが、今回は時間もあったので原作を読んだ上で鑑賞。それが功を奏し、比較して見ることができ、本作に対する解像度が上がりました。

 本作では、貴種流離譚として、王位を追われたポールが敵を滅ぼし、皇帝の座を得るまでを描く。原作からの翻案として、これを一歩引いた視点で描いているというのがある。「英雄」ポールの誕生はレディ・ジェシカが予言の通り裏で手をまわした結果であると強調し、ポール自身も、「予言」に従うことで多大な犠牲が出ることに苦悩し、なかなか英雄になろうとはしない。この点に、既存の英雄譚とは距離を置こうとするヴィルヌーヴの意志が見える。また、フレメン達の宗教的熱狂を一歩引いて描くことで、その危うさを観客に感じさせる作りになっている。その代表的な存在がチャニ(終始しかめっ面)で、彼女だけがポールに異議を唱え、予言に対して否定的な態度を見せる。そして彼女の決断によって、本作の結末が「正しかったのか?」と疑問を呈し、苦い余韻を残すようになっている。イスラエルとハマスの紛争とかを鑑みるに、この終わり方しかないとも思う。

 本作でも圧巻の映像と音楽は健在。実際に砂漠で撮影したという画面もそうだし、全編IMAXで撮影されているため、その画角をフルに活かした画作りがなされている。序盤の高低差を活かしたアクション、砂虫の登場シーンなどなど。更に、前作以上にヴィルヌーヴの作家性が強調されていて、フェイド・ラウサ登場シーンが急に(多分)意味もなくモノクロになり、『メッセージ』で出てきたみたいな液状花火があがるという強烈なシーンもある。また、音もかなり効いていて、砂虫が来る前の振動が腹の底に響く。そこにハンス・ジマーの音楽が爆音でかかる。これらに終始圧倒される。

 本作の弱点として、「ストーリーが弱い」という点がある。前作からそうだったのだけど、進み方が平板で、事実の羅列が続くという印象がある。しかし、そこは上述の映像と音楽の力で観客を無理やり納得させてしまうという剛腕ぶりを発揮している。私はまんまとこれにやられてしまった。一応擁護しておくと、この平板さは原作譲りという点がある。終盤の最終決戦だって原作での一瞬で終わるし、各キャラの散り様もあっさりしている(デイヴ・バウディスタのキャラはいつの間にか死んでる)。映画ではこれに見せ場を作ったりして、劇的になるようにしている。後、原作からの翻案だと、遂に出た口述記録の使い方がとても上手かった。

 キャストも全員良かった。シャラメはポールの闇落ちぶりを演技で体現してたし、オースティン・バトラーの狂戦士っぷりもハマってた。また、フローレンス・ピューの存在感の素晴らしさは随一で、クリストファー・ウォーケンに負けてない。後、ハビエル・バルデムがまさかのギャグキャラ化で笑った。

 これで決着かと思いきや、まさかの「俺たちの戦いはまだまだ続く・・・」エンドだったので、原作「砂漠の救世主」を読みながら待とうと思います。
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