観客に映像体験の極地を叩き付けた、現代映像神話の最高峰にして、到達点。
本作以上に、IMAXレーザーGTという(現在の日本における)最高の環境で鑑賞できて良かったと思う作品は、これまでなかったと思います。
前作から引き続きの、洗練されたルックの良さ、造形物の異質さ、格好良さ、アクションパート、ドラマパート、双方に言えるカメラワークの素晴らしさ、サンパーという、本作独自のサスペンス増強装置、文字通りサンドワームに乗る爽快感、ハンス・ジマーが手がける、作品への没入度を最大まで高める劇伴と、映画を構成する要素すべてが、映画的興奮を刺激するスパイスになっていて、脳が開くような心地でした。
特に、冒頭部にあたるアクションシークエンスの、『ARGYLLE/アーガイル』とは別ベクトルのデザイン性の高さには、本当に凄まじいものがありました。
ハルコンネンの兵士たちがふわりと浮かび、岩山を登る。運動(銃での攻撃)を止めたと思えばまた再開し、先ほどとは真逆に、今度はズサリと身を震わせる音とともに落下してくる。カメラワークとしても、寄りと引きの往復ビンタを効果的に利用し、観客の心を掴んで離さない。
映画が始まってすぐにこんなシークエンスが展開されれば、否が応でもその後の物語にも期待してしまいます。
そして、しっかりとその上がりに上がった期待に応えられているというのが、ドゥニ・ヴィルヌーヴの恐ろしさでもあります。
前作が序章部、起承転結で言う「起」で終わってしまっていたこともあって、本作はゆっくりながらもストーリーに発展を見ることができ、映画単体、1本の作品としても、満足度の高いものに仕上がっていたと思います。
主人公であるポール(ティモシー・シャラメ)が、英雄譚と反英雄譚、『アラビアのロレンス』的な物語構造をなぞり物語を進展させていく中、その裏で密かに暗躍する、ジェシカを筆頭としたベネ・ゲセリットの面々が非常に不気味で、それらが並行して語られていくストーリーテリングは、他の追随を許さない映像に説得力をもたせられるだけの力があり、のめり込むように鑑賞していました。
ただ、後半は少し駆け足気味になっていたような感覚があり、そこだけは残念でした。
集中力は途切れないにしても、もっと短い方が観客としてはより高い没入度を維持できるように感じました。
また、ポールと、フェイド=ラウサ(オースティン・バトラー)との対決は、中盤からずっと引っ張っていただけに、もう少しじっくり見せてほしかったです。
総じて、気になった点はその程度で、あとは押し付けられる映像の圧力に屈服し、陰謀渦巻く物語の闇に飲み込まれるという、圧倒的な映画体験、現代映像神話の目撃に、完全に心を奪われた傑作でした!