MasaichiYaguchi

ボイリング・ポイント/沸騰のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.7
一年で最もにぎわうクリスマス前の金曜日、ロンドンにある人気高級レストランを舞台にノー編集・ノーCGの正真正銘のワンショットでオーナーシェフを中心にレストランスタッフたちのスリリングな一夜の人間ドラマが繰り広げられていく。
そのレストランのオーナーシェフのアンディは、妻子との別居や衛生管理検査で評価を下げられる等のトラブルに見舞われて疲れ切っている。
それでも彼は何とか店をオープンさせるが、余りの予約の多さにスタッフたちはテンパり、色々なアクシデントも起きて一触即発状態となっていく。
更にアンディに追い込みを掛けるように、ライバルシェフが有名なグルメ評論家を連れて突然来店して脅迫まがいの取引を持ち掛けてくる。
全編ワンショットというと、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」や「1917」が思い浮かぶが、これらの作品は編集を駆使したいわゆる“疑似ワンショット”なので、この映画の約90分の正真正銘のワンショットの凄さを痛感してしまう。
アンディだけでなく、厨房やフロアのスタッフをリレーのようにワンカメラが追っていくのだが、動線や場面転換を事前によく検討されているのが分かる程にシームレスにストーリーは展開する。
だが、ストーリーの進展と共にレストランは抜き差しならない状況に陥っていく。
果たしてタイトルの“ボイリング・ポイント”に達した時、如何なる事態をもたらすのか?
アンディに纏わる様々な伏線が回収されたラストが強いインパクトを残します。