ないな

ボイリング・ポイント/沸騰のないなのレビュー・感想・評価

4.5
度重なるトラブルに、溜まるフラストレーション。やがてスタッフの沸点を越える大きなトラブルが起きて…てな話

個人的に今年ベスト5に入る傑作でした。

飲食をやってたので、怖いモノ見たさで鑑賞しましたが想像以上でした。
レストランの現場解像度が高すぎて、「あぁ、どこの国も中身は同じなんだなぁ…」と変な感動を覚えました笑
序盤からラストまで、ドラッグとかストーリーにメリハリをつけるためのドラマや過剰な演出を除けば、本当にレストランの日常でしか無かったです。
教習所で車の事故の映像を観て気を引き締められる感覚を、この映画で味わってしまうほどの「どこのレストランでも起こりうるトラブル」飲食ホラードキュメンタリーでした。

簡潔に言うと【「クリスマス直前の金曜日の高級レストランのディナー」という一年で一番忙しい90分に密着してみた映画】という感じでした。

全編ワンカットというのが今作は評価されてますが、「現場の緊張感」「全てのスタッフの事情」「ボイリング・ポイントに向けての下敷き」をシームレスに見せる撮影方法が結果ワンカットになったのだな、と思わせる、カットだけで無く「今まさにそこにいる感」も途切れさせないのが秀逸でした。

ネトフリのカーターのような「ワンカット風」の作品が見られる中、ワンカット映画の真髄を見た気がしました。

映画館という封鎖された空間も緊張感に一役買ってますので、劇場で公開されてるうちに是非劇場でご覧ください!


飲食店解像度激高ポイント(微ネタバレ?)

・営業前に終わらない仕込み
・忘れられた発注、それのカバーにてんやわんや
・突然の衛生検査
その日の粗探しして評価を下げないでくれ
・キッチンとホールの連携と感覚の違いや共有不足によるトラブル
・不真面目だけどスタッフには好かれてる、扱いの困るバイト
・真面目にしてるが故に、スタッフにもお客にも振り回され、割を食うバイト
・スタッフにより態度を変えるクソ客。
・手が空いてるとサボるなと指摘されるのでとりあえず雑務をこなすスタッフ。周りが見えてなくて優先順位があやふやになり、結果上司に注意される。
・現場感を分かってないオーナー(支配人)、たまる現場の不満。
自分のことで頭いっぱいでとんでもないタイミングでとんでもないこと言い出しやがる
・「あそこ有名人(レビュアー)だぞ、料理には最善の注意を払え」


料理が美味しいのはレストランにとっては当たり前、そこにいいチームがあって、そこはいい店となる
劇中の
「シェフが2流でもチームが良ければレストランはうまく行くものさ」
というセリフが刺さる…

よく悪質クレームやクソ客の話題になるたびに「接客業を義務教育にすればいい、そしたら辛さが分かってみんな優しくなる」という文言が見られるが、飲食で働いてる人の教材資料にしてもいいのでは?というくらい完成度が高かった

きっと観た日から仲間に優しくできるはず
(ただし共感性が高くて悶え死にそうになる)
ないな

ないな