ドキュメンタリーだが、映像も構成もかなり作り込まれている作品。
作り込まれている故の作品としてのクオリティと、頭にスッと入ってくる構成は見事。
また、「紛争」ではなく「難民」という切り口で描いているのも、如何に難民問題が複雑で、長期的に人々を苦しめているものであるかということがしっかりと伝えられているので素晴らしい。

「難民」の子供たちは、一体どれほどの苦しみを抱えて生きているのだろう。どの国からも、誰からも「必要」だと思われていないことを、この歳で感じてしまっている。

「僕たちは悪い人間なの？」
何が良くて、何が悪いのだろうか。無垢な子供たちに、「自分が悪いんだ」と思わせてしまうこの世界は、少なくとも良くはない。
わたしたちは、地球人として共に生きることはできないのだろうか。
国とか、国境とか、苦しみを抱えている子供たちを犠牲にしてまで、保つべきものなのだろうか。
そんなことをぐるぐると考えてしまって、とても辛くなった。

一方で、映像と構成のあまりの綺麗さに、ここで映されることのどこまでが真実なのだろう？と考えてしまう。
「ドキュメンタリー映画」とはいえ、印象操作は簡単に出来てしまう。インタビューカットなどもそうだが、映画として撮影する過程で「新しい事柄」を生むことは、果たして真実と言えるのだろうか、と。
また、空撮映像をこまめに挟んでいるが、これにはどういった意図があるのだろう。美しく壮大な自然との対比を表現しているのだろうか。個人的には、それがあまり好きではなかった。

しかし、やはりこういう作品が世に出て行って、多くの人に知ってもらう、観てもらうことに価値はあるのだと思う。そうでもしないと、きっと難民の存在は、時と共に少しずつ忘れ去られてしまうのだから。

ウクライナ問題をきっかけに鑑賞した。人権とは何か、生きることは何か、豊かさとは何か、考えるきっかけになった。普段、難民について考えるきっかけはなく否定的な考えしか持っていなかったが、もう少し世界に広く目を向けてみようと思った。難民問題から逃げてはいけないと思った。

難民について何も知らないことを恥ずかしく思った。命からがら逃げるということ、逃げた場所でも人間らしくいられるかどうか、「人間の尊厳」について考えさせられる映画だった。