みゆ

ウーマン・トーキング 私たちの選択のみゆのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

2010年にボリビアで起こっていた実話をもとに制作された作品。自給自足の生活するキリスト教の村で、女性たちが度々レイプにあう。それを男どもは「悪魔の仕業」「作り話」等と言いレイプを否定。しだいに女性たちは、それが悪魔の仕業や作り話などではなく、実際は家畜用の薬物を使いレイプをする犯罪だったと知る事に。2010年て随分最近で、どんな村なんだ…。
男たちが街へと出かけて不在にしている2日間、彼女たちは未来を懸けた話し合いを行う。
その彼女たちが会話劇シーンがこの映画の大半を占めるわけですが、一瞬たりとも集中が途切れずスクリーンを凝視して観てしまった。このテーマは、時代や地域、宗教問題に関わらず、男と女がいる限りなくならない問題だと思う。男性という人間の在り方が問われていると感じた。
最初は"赦す・闘う・去る"の三択という極論や「赦さないと自分も赦されず、最後にはキリスト教的に天国にも行けない」の繰り返しに、結局自分の為かと思いつつも、最終的には「子供たちのために」という動機で彼女たちが出した結論に胸を撫で下ろした。
知識や教養はないものの、知性や理性に裏打ちされた彼女たちの主張には、直接心に響いてくるような重みを感じることができる。教育を受けていないために文字が読めないし、基本的人権の概念も薄い。感情的なぶつかり合いになってもおかしくないが、長い時間をかけてロジカルに議論が収斂していく。
恐怖や憎しみの対象である加害者の男たちが、はっきりと画面に映し出されないため、観客が、討論の行方を、冷静かつ客観的に見守ることができるようにもなっている。すでに結論は出ているのだが、全員がそれに納得できている訳ではない。
そんな中、彼女たちが、宗教的な「善」の価値観や「子供たちのため」という信念に基づいて、誰もが同意できる解釈を導き出す過程は見応えがあった。ただ、色々と戦々恐々とした映画でした。
あ、「ドラゴンタトゥーの女」のリズベットのお二方が出演されてます。
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