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ウーマン・トーキング 私たちの選択のemuのネタバレレビュー・内容・結末

4.3

このレビューはネタバレを含みます

描かれる女たちの多様性。わたしたちは誰も除け者にしないしさせないという強い意志をひしひしと感じた。
サロメのように自分の恋人や友人や息子が性加害者になる筈がないと信じて疑わないのは当然だと思う。でも信じるだけではだめで、そこからどうすればいいのか私たちには何が必要なのかこの映画は教えてくれていた。彼女達が向き合っていたのは「男性」ではなく「社会の仕組み」そのものだったんだな。文字を知らない、教育を享受できないことは私たちから意思や声を奪うことと一緒。沈黙は恐怖と同じ。これが2010年に起こった実話なのかと驚く前に、文字も教育も学びの機会を与えられている現代社会でも、環境はさほど変わってはいない事実にやるせなさを感じてしまう。彼女たちは文字も言葉も知らないハンディを抱えていたのに、私たちは彼女たちよりずっと多くのものを与えられているはずなのに、彼女たちのコミュニティが私たちの生きる今に地続きで繋がっていて、むしろ現代の私たちの方がずっと生きづらい世の中になってしまっている気がするのは何故なのだろう。

南十字星から方角を知る方法を伝えていくオーナの姿がすごく印象に残っている。受けた傷は誰にも癒せない。たとえ当事者たち同士で語り合い、涙を流し、感情をぶつけ合っても。貴方の痛みは貴方だけのもの、私の痛みも私だけのもの。分けあうことはできないけれど、手を取り合うことはできる。受けた暴力に暴力で返さなかった強さ、自分の受けた深い傷を、忘れることも癒すこともできない、その傷を選択を、小さな希望に変えていくことの強さ。私たちには考えることも怒ることも、決断し行動するだけの強い力が有るというメッセージをこれからも忘れない。私の物語はあなたの物語。彼女たちの出発はスタート地点に過ぎない。
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