アキラナウェイ

ウーマン・トーキング 私たちの選択のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

4.3
原作は同名ベストセラー小説「WOMAN TALKING」。監督は「死ぬまでにしたい10のこと」等で女優として活躍するサラ・ポーリー。

自給自足で生活するキリスト教一派の村で起きた連続レイプ事件。これまで女性達はそれを「悪魔の仕業」「作り話」だと男性達に否定されていたが、ある日それが実際に彼らによる犯罪だった事が明らかに。尊厳を奪われた彼女達は自らの未来を懸けた話し合いを行う—— 。

本来牛に処方する鎮静剤で女性達を眠らせ、事に及ぶという男性達のレイプの手口に驚愕。女性達は朝になって目覚めた後、血だらけになった下半身を見て恐れ慄く。しかも、それを悪魔の仕業に責任転嫁し、女性達の口を塞ぐという男どもの鬼畜っぷり。

閉鎖的なコミュニティだからこそ罷り通ってしまう、男性優位の歪な組織構造。

時代なのかなぁ…と思っていたら、驚愕の事実が中盤で明らかにされる。

2010年の出来事だというのだ。
に、にせんじゅうねん…!?!?
ついこの間じゃん!?!?
これには心底驚いたし、2005年〜2009年にボリビアで起きた実際の事件を元に描かれていると知り、更に驚いたんだけど!?

女性達が話し合うは、今後の自分達の選択肢。

①何もしない
②残って闘う
③村を出る

これまで彼女達に選択肢等そもそもなかったのだ。男性の言う通りに彼らに仕え、宗教の名の下に彼らを許してきた。しかし、ここまで著しく人としての尊厳を傷付けられ、女性達も堪らず声を上げ立ち上がるように。

一口に女性達と言っても、そこはそれぞれに個性があり、考え方も様々。

村を出る事に否定的な者、残って男達と闘おうとする者、村を出て自分達だけの新天地を目指そうとする者。

フランシス・マクドーマンド、ルーニー・マーラ、ジェシー・バックリー等、実力派の女性陣達が、見事な会話劇を繰り広げる。

黒一点、書記と議事進行を務める男性オーガストを演じるベン・ウィショーも公平な立場で会議を進行させる重要な役どころ。

時代を読み違えてしまったのは、色褪せたフィルターに因るものか。リフレインする音楽も良く、劇中とエンドロールで流れる「Daydream Believer 」がまた上質の余韻を残す。

男女平等
女性の社会進出

世の中は随分と前進したと思っていたけど、2000年代に入ってもまだこんな事が起きている訳で、特に閉鎖的なムラ社会ではまだまだ女性が虐げられ続けている訳だ。

能登半島地震の避難所生活を続ける被災者の方達への支援物資として、女性の生理用品の是非がSNSで議論になっているのを見かけた。生理用品を必要とする女性に我儘だとか、我慢しろだとか言っている男性がいるらしい。


バカなんじゃないの????


ていうか、生理がない男性は黙っていろよ。女性が要るって言っているんだから、要るんだよ。激痛に顔を歪め苦しむ女性を見た事がないのか?ないのか、そうか。

我が国の男女平等もまだまだ道半ばで、時代錯誤なんだと、これまた愕然とさせられた。

話が逸れたけど、作品としてはテーマが明確で、舞台劇然とした会話の応酬に魅せられ、何より2010年の出来事だという事を最初は伏せて展開させる辺りが好感触。