ゆっけ

シング・ストリート 未来へのうたのゆっけのレビュー・感想・評価

5.0
『once ダブリンの街角で』『はじまりのうた』のジョン・カーニー監督。

やっぱり好きでした。

1980年代。アイルランド・ダブリン。
父親は失業、母親は浮気、学費の安い学校に転校したらいじめられ、校長とも相性が悪い。そんな最悪な高校生活からとにかくアクセル踏んで前に進むようになったのは、ある一人の女性と出会ったから。

気になるあの子を振り向かせるために、バンド活動をする。そんなありきたりな動機ですが、とっても良い映画です。
初めは、全然ダメダメなバンドなんですよね。声もこれでボーカルできるの?って心配になるくらい下手。プロモーションビデオもダサダサ。服装もダサダサ。とにかくダサいのですが、だんだんとカッコよくなっていくところが鳥肌もの。
(体育館のシーン最高です!)

「何でも半端じゃよくない」
「アクセル全開で前に」

きっと、文字通り青臭い言葉ですが、これぞ"青春"って感じがします。音が重なって、みんなが楽しくなる展開は『はじまりのうた』と同じですよね。

いじめっ子や両親に対してのアプローチの仕方も素晴らしいです。あと、家に引きこもっているアニキの描き方が素晴らしいです。確実にアニキに影響を受けてきて成長しますが、そこから関係性が一変していくところ。自分のようにやった!と喜ぶアニキ。感動しました。


どんなにダサくても、やってみたことで出来上がる掛け替えのないもの。自分が思い描いていたものでなくとも、そういったちょっと恥ずかしいことって若いうちにやっておきたいなと思えます。ほっぺた赤くたっていいじゃないか!

『はじまりのうた』では、今まで歩んできた道を立ち止まってまた元々好きだったことに輝きを灯すような映画でしたが、『シング・ストリート』ではそのもっと手前の段階の "越えて"いくことを描いているように思えます。”好き”の前に起こるもっと大事な”衝動的な想い”ですかね。

両親や学校の規則などから自由になって"越えて"いくこと。
そこから、きっといろいろな失敗を繰り返し、悩んで、立ち止まって、”自分の想い”っていうものが何となくできてくるんだろうなぁって。もう後戻りしない。そんな今後の人生も垣間見られる爽やかなラストでした。

前へ進め!!
ゆっけ

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