RyoSさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

[リミット](2010年製作の映画)

3.7

棺の中だけのワンシチュエーションもので、外部とは携帯電話で繋がる。イラク戦争や認知症など、本人と棺以外の社会的な話題まで触れていることが、想像を掻き立てられて深みを感じる。主人公の反応、情報の出し方が>>続きを読む

午後の五時(2003年製作の映画)

4.0

またしてもイスラーム映画祭で傑作に出会ってしまった。

アメリカがアフガニスタンに侵攻し始めた翌年の映画。女性の人権を描いていて、映画の建付けとしては完全にフィクションなはずなのだが、アフガニスタンの
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すずめの戸締まり(2022年製作の映画)

3.7

常世の美しさと切なさが共存している風景、『雲の向こう、約束の場所』みたいでとても好き。

今までのうざいナレーションも無く、セリフは多いが冗長ではない、という理想のスタイル。音楽もRADに頼りすぎずに
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コンパートメントNo.6(2021年製作の映画)

3.4

同室者が粗野だみたいな謳い文句であったが、そもそも3等車でない時点である程度のプライバシーと余裕とリテラシーがある(高価でない限り盗んだりしないとか)ので、主人公とは最低限の同質性を持ち合わせている。>>続きを読む

まなみ100%(2023年製作の映画)

3.6

自分はほとんど川北監督を知らないが、それでも後半川北監督にしか見えなかった。

今までの作品同様、高校が坂の上にあり、必ず下校のシーンで下り坂になる。自分も坂の上に高校があったから、そのエモさは実体験
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夢の裏側 ドキュメンタリー・オン・シャドウプレイ(2019年製作の映画)

3.7

規模も格も全然違うのに、なぜか自主映画の延長みたいな雰囲気だった。

「ヌオは惚れても惚れなくても悲劇」と言っていて、これが脚本の肝かと感じた。撮影許可取りについて、ルールとか法律とかあるけど結局は人
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シャドウプレイ 完全版(2018年製作の映画)

3.8

久々にため息の出るイカした映画を観た。チラシの写真で惚れて2020年に公開でずっと楽しみにしてたのにいつの間にか公開が流れれて、待望の作品。期待値上げすぎないように気をつけてたけどちゃんと素晴らしかっ>>続きを読む

茶飲友達(2022年製作の映画)

3.3

茶柱、茶菓子、LINEの通知といった細かい演出が粋。またミニバンやちょっとおしゃれな原付きなど、乗り物のセンスが良かった。

最近流行りの疑似家族モノだが、ストーリー展開も中盤まではあるあるで進んでい
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南部の反逆者(1957年製作の映画)

3.6

邦題からてっきり西部劇だと思っていたが、南北戦争期の奴隷制と人種の映画だった。

黒人とか白人とか、奴隷とか解放とか、北軍とか南軍とか、ここの対立は分かりやすいが、それらがからみ合った人間模様が描かれ
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尼僧物語(1959年製作の映画)

4.0

これからは好きな監督の一人にフレッド・ジンネマンを挙げよう。

修道女になる過程をとても丁寧に描いていて、どのような教育を受けて何を考えどう行動しているのかがよくわかり、今後映画を見ていく上でもシスタ
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黄金の馬車(1953年製作の映画)

3.3

演劇っぽさを限りなく映し出した映画。昔の映画はだいたい誰が二枚目三枚目か分かりやすいので結末も分かったようなものだが、それでもそこに至るまでのドタバタが面白いから観るのだなと。

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

3.6

以前家に水槽があるのが文系的な演出だなと思ったが、この映画は文系的な演出と理系的な演出がいい塩梅に混ざっている気がした。例えば恋人から現金でお金を受け取るというのはとても文系的な演出だと感じた一方で、>>続きを読む

離ればなれになっても(2020年製作の映画)

3.3

『甘い生活』と『ラ・ブーム』は必修ですね。

135分で40年の年月をさらっていて、はじめから終わりまで忙しなさすぎてちょっと疲れるが、人生とは忙しないうちに過ぎてゆくものなんだろう。『悲しみは空の彼
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メメント(2000年製作の映画)

3.5

自分にとってはちょうどいい難易度かもしれない。カラーと白黒ですぐに区別は付いたし、断片をつなぎ合わせて理解していく様は観客自身が探偵となって推理させるタイプのミステリーだなと。

困らず理解できたのは
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遠い夜明け(1987年製作の映画)

3.5

人間ってどこまでも残酷な種族だなと思った。アパルトヘイト廃止前、原作が出た10年後という時期の映画で、この内容が世に出てから10年経ってもまだ1987年なのかというのが驚きで、邦題の『遠い夜明け』の意>>続きを読む

折れた矢(1950年製作の映画)

3.5

こういうアパッチを人として描くような先進的な映画はだいたいジェームズ・ステュアートな気がする。

先住民をちゃんと描いてる映画は『アパッチの怒り』『燃える平原児』『馬上の二人』『ワイルド・アパッチ』な
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帰らざる河(1954年製作の映画)

3.3

「あいつは無理だけど俺ならできる」みたいなセリフ、もう聞き飽きた。

ラストハイヒールを捨てる演出、良い。

荒野のストレンジャー(1972年製作の映画)

3.8

『真昼の決闘』のタラレバ&後日談な映画。

見知らぬ人が保守的な街にやってきて、やってくる悪党を倒すために雇うとこまではおなじみの展開だが、雇ってからちょっとずつ歯車が狂っていく様がとても好き。『ミッ
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ホワイトナイツ/白夜(1985年製作の映画)

3.4

結局は西側の作った映画なんだよなと。
バレエとタップダンスのシーンがとても良いし、西東というよりかは芸術への想いに重きが置かれていたのも良かった。
イザベラ・ロッセリーニはイングリッド・バーグマンそっ
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あのこと(2021年製作の映画)

3.6

中絶の問題を見るたびに、男性の責任が問われていないのを毎回疑問に思う。処女懐胎ではあるまいし、必ず男性と女性の両方がいるはずなのに、女性ばかりが対処を強いられる。

一見真面目そうな人がだいぶ遊んでい
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リスケ(2021年製作の映画)

-

やはり鈴江監督の描く男二人の独特な空気感は苦手なのだが、前二作と比べて自分が苦手なだけだなという感じが強くなっている。陳腐に表現するならば、鈴江監督は男性の女々しさを描きたくて、自分は女性の凛々しさを>>続きを読む

スパルタカス(1960年製作の映画)

3.4

確かにキューブリックさはだいぶ控えめだが、圧倒的人、人、人はこの時代ならではであり、現代のCGを持ってしても迫力は遠く及ばない。

恋愛小説家(1997年製作の映画)

3.1

1997年にしてこの差別的表現は流石に遅れていると思わざるを得ない(日本ではまだまだですが...)

地に足の付いた大人の恋愛というのは90年代には多いけど、あんまり好きにはなれない。結局金こそ力みた
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パリは燃えているか(1966年製作の映画)

3.4

思ったより娯楽色が強い。アラン・ドロン、ジャン・ポール・ベルモンド、カーク・ダグラス、オーソン・ウェルズ...主演級の人が助演としてゴロゴロいるのは昔の映画っぽくて楽しい。

追われる男(1954年製作の映画)

3.4

過去に色々あった主人公が若者を更生させようとしたり街に正義を取り戻そうとしたり頑張るがなかなか上手く行かない話。義父に娘さんくださいっていうシーンが、くださいという言葉が一言もなくてめちゃめちゃオシャ>>続きを読む

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)

3.3

guilty or mot guiltyという二択をラストに用意しておいて法廷劇と回想で描いていくという超古典的な手法だが、そんなことはどうでもよくて、湿地で育った主人公の人格形成こそ一番描きたいんだ>>続きを読む

ノベンバー(2017年製作の映画)

3.4

ホラーかと思ったらゴリゴリの恋愛映画だった。古き良きハリウッドとは一線を画す陰影が美しい。

ほとんどのシーンで、登場人物の「やっていること」の描写の暫く後に「その動作の意味」が来るので、分からない時
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I am Sam アイ・アム・サム(2001年製作の映画)

3.2

あらすじもストーリーも最高だったけど映像がとにかくダメだった。字幕無かったら酔う。

子どもにとって本当に幸せな親は誰かみたいな問いをかける映画は多いけど、やっぱり『チョコレートドーナツ』と『クレイマ
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トラ・トラ・トラ!(1970年製作の映画)

3.5

こういうアメリカ映画で出てくる日本人がちゃんと日本人してるのはちょっと嬉しい。

前半は単調で面白みに欠けるが後半の航空機の音と静寂の対比が際立ってくるにつれて、前半は単調で良かったんだなと思った。そ
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ワイルド・アパッチ(1972年製作の映画)

3.6

居留地から先住民の戦士が脱走し、騎兵隊が追う、みたいなあるあるな展開からの、騎兵隊率いる少尉が敬虔なクリスチャンで人の残虐性について考えたり、先住民もとても賢く描かれていて対等に扱われていたりして、濃>>続きを読む

プラトーン(1986年製作の映画)

3.7

ベトナム戦争を描いているアメリカ映画は山ほどあるが、これが戦場理解という面では一番シンプルで王道な気がする。ひたすら冷徹に描かれているのが、その冷徹さは経験者ならではなんだろう。ドンパチやってないシー>>続きを読む

行き止まりの世界に生まれて(2018年製作の映画)

3.7

最初はみんな同じフレームに収まっていたのに徐々にバラバラのフレームになっていく様が、少年少女から大人になって各々の道を歩んでいく時の切なさを感じた。

冒頭のスケボーシーンの撮影の時点で、撮る人撮られ
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旅立ちの時(1988年製作の映画)

3.9

大体『コーダ』の上位互換。境遇に対する理解ではなく諦観が子どもに染み付いているのが、コーダと違ってとてもリアルに感じた。外部の人の働きかけによって徐々に両親の呪縛から解かれていく(ただし困難な壁を登る>>続きを読む

西瓜(2005年製作の映画)

3.3

ひたすら草な場面が続く。ストーリーがあってないようなものなのに飽きない。

観客「なぜ西瓜なんですか?」
監督「西瓜が大好きだから」